法人の社用車の保険料が高い。
原因をたどると、低等級と事故有係数が刺さっているケースが多いです。
焦って乗り換える前に、契約形態(ノンフリート・フリート)、等級、補償設計、保険を使う基準を整理すると、改善の筋道が見えてきます。
この記事では、低等級が起きる仕組みから、保険料を下げる具体策、名義変更で失敗しない注意点まで、実務目線でまとめます。
- 法人の低等級は、等級と事故有係数で保険料が高止まりしやすいです。
- 事故対応と保険を使う基準、車両保険と免責の設計で改善の余地が出ます。
- 名義変更や法人⇄個人の切替は等級で損しやすいので事前確認が必須です。

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格
- 損害保険募集人資格
- 生命保険募集人資格
- 損害保険大学課程資格
- FP2級
保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%
法人の自動車保険で低等級が起きる仕組み
これから法人の自動車保険で低等級が起きる仕組みについて解説します。
- ノンフリート等級の基本
- 低等級の定義
- 事故有係数適用期間の考え方
ノンフリート等級の基本(1〜20等級・6等級スタート)
法人でも社用車が9台以下なら、基本はノンフリート契約になり、等級(1〜20)で保険料が割引・割増されます。
初めての契約は6等級スタートが基本です。
等級はざっくり言うと、事故リスクの実績に応じた評価で、低いほど割増になりやすい仕組みです。
だから低等級の状態で契約を続けると、毎年の固定費が重くなります。
社用車を導入したばかりの会社が、事故が続いてしまい、6等級から下がって保険料が跳ね上がった、というのは珍しくありません。
まずは、いまの契約がノンフリートなのか、等級が何等級なのか、事故有係数が付いているのかを把握すると話が早くなります。
低等級とはどの状態か
低等級は、ざっくり言うと割引が弱い、もしくは割増が強い等級帯のことです。
特に1〜5等級あたりは、保険料が高く感じやすいゾーンです。
理由は単純で、等級が低い=事故リスクの実績が悪いと見なされやすく、料率が厳しくなるからです。
社用車を複数台持つ会社で、運転者が多い、稼働が多い、初心者運転が混ざる、夜間走行が多い、といった環境だと、どうしても事故が起きやすく、低等級に落ち込みやすいです。
低等級は恥でも失敗でもなく、現状のリスク評価がそうなっているだけなので、ここから立て直す設計に変えればOKです。
事故有係数適用期間が効いてくる場面
等級だけ見て安心できないのが、事故有係数適用期間です。
事故ありの条件が付いている間は、同じ等級でも料率が厳しくなることがあります。
事故対応で保険を使った結果、等級が下がるだけでなく、事故ありの扱いが一定期間続くことで、翌年以降の保険料がさらに重くなることがあります。
社用車で小さな接触を何度か起こし、修理費を保険で出していたら、数年単位で保険料が高止まりしてしまった、というケースは現場でよく起きます。
ここは、事故の都度の判断ルールを作っておくと、かなり改善します。
低等級だと保険料が上がる理由と見落としがちな要因
これから低等級だと保険料が上がる理由と見落としがちな要因について解説します。
- 等級ダウンの影響
- 契約条件で上がる要素
- 保険を使う判断の落とし穴
事故による等級ダウンの影響
低等級の最大要因は、事故実績です。
ノンフリート等級は事故の有無や内容などを踏まえて設定され、保険料の割引・割増に直結します。
法人の場合、社内で運転が分散しやすいので、個人よりも事故が起きる確率が上がりやすいです。
だから、事故が出た瞬間に等級が下がり、保険料が跳ねるインパクトが強く見えます。
配送で稼働を止められない会社が、ミラー接触やバック事故を短期間に重ねてしまい、結果として保険料が利益を圧迫してしまった、というのはありがちな流れです。
事故をゼロにするのは難しいので、事故を減らす仕組みと、保険を使う判断基準をセットで持つのが現実的です。
車の使用目的・運転者範囲・補償設計で増える保険料
等級以外にも、契約条件で保険料は上下します。
法人契約は事業利用の前提になるため、運転者範囲や補償、特約が実態に合っていないと、ムダに高くなりがちです。
特に見直しポイントはこのあたりです。
- 運転者の範囲:実態より広くしていないか
- 年間の使用実態:走行距離・稼働が多いのに対策なしになっていないか
- 車両保険:全車フルで付けていて、免責も低すぎないか
- 対物・対人:必要水準は維持しつつ、付帯の整理はできないか
現場の実態が変わったのに、契約だけ昔のまま、という会社ほど、削れる余地が残っています。
小さな事故でも請求すると損になることがある
保険は使うほど得、と思いがちですが、低等級局面では逆になることがあります。
等級ダウンや事故あり係数の影響で、翌年以降の総支払額が増え、トータルで損になることがあるからです。
社用車のバンパー修理を保険で出したら、その後数年の保険料増で、結果的に修理費以上に払っていた、という話は普通にあります。
低等級の会社ほど、事故のたびに保険を使うのではなく、保険を使う事故と、社内で処理する事故を分けるルールが効きます。
この判断は金額だけでなく、対人・対物の絡み、相手方対応の難しさも含めて、基準化しておくとブレません。
低等級から抜け出す具体策
これから低等級から抜け出す具体策について解説します。
- 事故対応の方針
- 補償と免責の設計
- 事故を減らす仕組み化
事故対応の基本方針を決める
低等級を抜ける最短ルートは、次の更新までに事故件数を増やさないことです。
等級制度は事故実績がベースなので、ここが改善しない限り保険料は下がりません。
方針はシンプルで、社内で次を決めます。
- 対人・対物は迷わず保険を使う
- 単独事故や軽微修理は、金額基準で使うかどうかを決める
- 事故報告の導線を短くする(誰に何を何分以内に)
たとえば、接触事故が起きたときに、現場→上長→総務→代理店がバラバラで、情報が遅れた結果、相手対応がこじれて大きな支払いになった、というケースは現実に起きます。
最初に事故対応フローを整えるだけで、ムダな損害を減らせます。
免責金額・車両保険の付け方を整える
車両保険は便利ですが、低等級の会社がフルで厚く付けると、保険料が一気に重くなりやすいです。
法人向けは個人向けと契約できる内容が異なることもあるので、今の条件を前提に最適化を考えます。
見直しの考え方はこうです。
- 高年式・高額車:車両は付ける前提で、免責を現実的に上げる
- 低年式・低額車:車両を外す、または限定的にする
- 修理頻度が高い車種:軽微修理を保険に寄せない設計にする
現場でよくあるのが、全車同じ設計で契約していて、利益を圧迫しているパターンです。
車ごとに役割が違うので、補償も分けた方が合理的です。
結果として、保険料を削りつつ、守るべき事故は守れる形になります。
安全管理を仕組みにして事故を減らす
保険料を下げる最強施策は、事故を減らすことです。
精神論ではなく、仕組み化が効きます。
- バック事故対策:バック時は誘導、バックモニターの運用ルール
- ルート管理:無理な時間指定や過密ルートの是正
- ヒヤリハット:月1で共有して再発予防を決める
- ドライバー教育:短時間でも定期化する
毎月、同じ場所で同じ事故が起きる会社は、場所・時間帯・作業手順に原因が埋まっています。
そこを潰すと、事故件数が目に見えて減り、翌年以降の等級回復に繋がります。
低等級は戻せます。
戻すには、事故と保険の使い方を会社のルールにするのが近道です。
契約形態の見直し(フリート・ノンフリート)で改善できるケース
これから契約形態の見直しで改善できるケースについて解説します。
- フリートとノンフリートの境目
- 台数増のときの考え方
- 台数少の最適化
9台以下はノンフリート、10台以上はフリートが基本
社用車が10台以上ならフリート契約、9台以下ならノンフリート契約が基本です。
ノンフリートは1台ごとに等級が付く世界なので、低等級の車が混ざると、そこが重荷になりやすいです。
一方で台数が増えると、そもそも契約の枠組みが変わるので、会社全体としての設計の余地が出ます。
まずは、自社の総台数(業務使用の対象)を数え、境目にいるなら次の打ち手が変わります。
台数が増える会社はフリート検討が早い
台数が伸びる会社は、ノンフリートのまま場当たりで増車すると、低等級車が増えて保険料が膨らみやすいです。
フリートの解説記事でも、台数が多い場合の運用面メリットが触れられています。
配送や訪問が増えていく会社は、増車の見込みが出た段階で、代理店にフリート移行を含めた設計相談を入れると失敗しにくいです。
増車のたびに契約がぐちゃぐちゃになるのを防げます。
結果として、事故が起きても会社全体でコントロールしやすくなります。
台数が少ない会社がやるべき最適化
9台以下の会社は、フリートに逃げられない分、ノンフリートの最適化が勝負です。
等級制度は共通の仕組みで、条件を満たせば等級の引き継ぎができる前提もあります。
やることはこの3つに絞れます。
- 低等級車を増やさない(事故件数を抑える)
- 保険を使う基準を作る(小損害で乱用しない)
- 補償を車と業務に合わせる(全部盛りをやめる)
台数が少ない会社ほど、これだけで改善インパクトが出やすいです。
法人⇄個人、名義変更があるときの等級の注意点
これから法人⇄個人、名義変更があるときの等級の注意点について解説します。
- 原則の考え方
- 例外で通る可能性
- 事前確認の要点
法人から個人へは原則引き継げない
法人から個人へ契約を切り替えると、原則として等級は引き継げない、と案内している比較サイトがあります。
法人と個人は別人格という扱いになるためです。
ここを知らずに、車を個人名義に戻したら等級がリセットされて6等級からになり、想定外に高くなる、という事故が起きます。
社長個人の保険に寄せて安くしたつもりが、逆に高くなった、という笑えない話です。
名義変更や法人化の予定があるなら、契約を触る前に確認が必須です。
例外的に引き継げる可能性があるパターン
一方で、保険会社によって一定条件を満たせば、個人⇄法人の変更で等級を引き継げる可能性がある、と案内している保険会社もあります。
たとえば、個人事業主が法人を設立するケースや、法人解散して個人事業主になるケースなどは、条件次第で同一とみなされる可能性があります。
つまり結論は、いける・いけないを一般論で決め打ちしない方がいい、です。
やるべきは、契約中の保険会社・代理店に、該当する条件と必要書類を確認することです。
変更前に確認すべき書類・条件
名義変更が絡むときは、最低限これを揃えると相談が一気に進みます。
- 現在の保険証券(等級・事故有係数の確認)
- 車検証(所有者・使用者・用途)
- 法人化・事業承継の状況(同一性の説明材料)
- 運転者の実態(誰が主に運転するか)
FAQでも、一定条件で引き継ぐ旨と、必要書類は代理店へ、とされています。
書類が揃っていないと、担当者が判断できず時間だけ溶けます。
先に準備してから相談すると、最短ルートになります。
失敗しない見積もり・乗り換え・代理店相談の進め方
これから失敗しない見積もり・乗り換え・代理店相談の進め方について解説します。
- 事前準備のチェックリスト
- 比較の見方
- 質問テンプレ
見積もり前に整理する情報チェックリスト
低等級で焦って見積もりを取ると、条件が揃わず比較にならないことが多いです。
先にこれだけ整理します。
- 契約形態:ノンフリートか、フリートか(台数含む)
- 現在の等級と事故有係数の有無
- 直近の事故内容(対人・対物・単独・支払い有無)
- 車の用途と運転者の範囲
- 車両保険の要否(車ごと)
この時点で、代理店に投げれば、提案の精度が一気に上がります。
比較の軸(補償・免責・特約・事故対応)
保険料だけで比較すると、後で事故対応や特約で困ります。
法人は業務停止リスクがあるので、比較軸はこう置くと安全です。
- 対人・対物:上限の考え方(業務上の最悪を想定)
- 免責:軽微損害をどう扱うか
- 車両:必要な車だけ付ける
- 事故対応:連絡体制、代車、修理先の自由度
- 特約:業務実態に必要なものだけ残す
法人向けは個人向けと契約できる内容が異なることもある、と明記している保険会社もあるので、特約の確認は丁寧にやった方がいいです。
相談時に聞くべき質問テンプレ
代理店や保険会社に聞く内容は、これで十分です。
- 低等級の主原因は何になっていますか(事故回数・内容・係数)
- 事故有係数適用期間は何年ですか
- 保険を使う判断基準を作りたいです。いくら以上なら使うのが合理的ですか
- 車両保険は車ごとに分けた場合、保険料はどれくらい動きますか
- 近々、名義変更(法人化・個人化)予定があります。等級の扱いはどうなりますか
質問が具体的だと、回答も具体的になります。
低等級のときほど、曖昧な相談は損を招きやすいです。
法人の自動車保険の等級: まとめ
法人の自動車保険で低等級になると、等級(1〜20)と事故有係数の影響で保険料が高止まりしやすくなります。
まずは契約がノンフリートかフリートか、等級と係数を把握し、事故対応と保険を使う基準を社内ルール化するのが近道です。
車両保険や免責を車ごとに最適化し、事故を減らす安全管理を仕組みにすれば、更新ごとに改善が狙えます。
名義変更や法人⇄個人の切替は等級が引き継げない場合があるため、事前確認が必須です。
- ノンフリート等級は1〜20等級、初回6等級が基本
- 事故有係数が付くと同じ等級でも高くなりやすい
- 9台以下はノンフリート、10台以上はフリートが基本
- 低等級ほど、保険を使う基準づくりが効く
- 法人⇄個人の等級は原則引き継げないが例外もあるので要確認
法人の自動車保険の等級: よくある質問
今の保険が会社を守れているか、一度確認してみませんか?
もし、
- 自社の加入中の保険が適切に設計されているか不安
- 今の保険が本当に会社を守れているのかわからない
- 見直したいけれど、どこから手をつければいいのか迷っている
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