サイバー保険は必要ない?必要な判断基準をプロが解説

サイバー保険は必要ない、と感じる人は多いです。

保険料が高そう、補償が難しい、うちは狙われない。

気持ちはすごく分かります。

でもサイバー事故は、情報漏えいだけでなく業務停止や外注費の連鎖で、想像よりお金と時間が溶けやすいのが現実です。

この記事では、不要寄りの会社と必要寄りの会社を線引きしつつ、補償の見方と免責の落とし穴、保険より先にやるべき対策まで、実務目線でまとめます。

この記事を3行で解説
  • サイバー保険が必要ないと言われる理由と、そう言い切れない現実を整理します。
  • 不要寄り・必要寄りを分ける判断基準と、補償と免責の見方をまとめます。
  • 保険の前にやるべき最低限の対策と、失敗しない選び方までつなげます。
記事の筆者
保険アドバイザー

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格

  • 損害保険募集人資格
  • 生命保険募集人資格
  • 損害保険大学課程資格
  • FP2級

保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%

目次

サイバー保険が必要ないと言われる理由を整理する

これからサイバー保険が必要ないと言われる理由を解説します。

  • 保険料が高く感じる(費用対効果が見えにくい)
  • 補償内容が複雑でよく分からない
  • うちは狙われないという思い込みが起きやすい

保険料が高く感じる(費用対効果が見えにくい)

サイバー保険は、入っても何も起きなければリターンが見えません。

だからこそ、毎年の固定費として重く感じやすいです。

理由はシンプルで、サイバー事故は火災のように目に見える損害だけじゃなく、調査・復旧・通知・広報など目に見えにくい費用が積み上がる一方、平時にはその価値が体感しづらいからです。

たとえば、年商1〜3億規模の会社でも、ECや予約サイトが止まるだけで売上が止まり、さらに外部の調査・復旧を頼むとまとまった支出になります。

こういう時に初めて、保険料の意味が腹落ちする流れになりがちです。

なので最初は、保険料が高いかどうかではなく、事故が起きた時に一括で出せる金額かどうかで見るのが現実的です。

補償内容が複雑でよく分からない

サイバー保険が分かりにくいのは、補償がひとつの事故に対して複数レイヤーで発生するからです。

大きく分けると、外部への賠償、事故対応の費用、自社の売上損失の3系統があり、商品によって強い部分が違います。

月末の締め前に基幹システムが止まり、出荷が止まって、取引先に謝り、外部の調査会社と弁護士にも入ってもらう。

こういう現場の流れを思い浮かべると、補償の必要箇所が見えやすくなります。

結局のところ、補償項目の暗記よりも、自社で起きたら困る順に並べる方が、失敗しにくいです。

うちは狙われないという思い込みが起きやすい

サイバー攻撃は、大企業だけの話ではなくなっています。

特に中小企業は対策が手薄だと思われると狙われやすく、しかも取引先経由で巻き込まれることもあります。

それでも思い込みが起きるのは、普段の業務が回っていると、攻撃者の視点を想像する機会がほぼないからです。

朝の始業前、経理担当のメールに請求書を装った添付が届き、うっかり開いた瞬間から暗号化が始まる。

こういう入り口は、特別なIT会社だけの話じゃありません。

だからこそ、うちは狙われないではなく、うちは止まっても耐えられるかで考えるのが一番ズレません。

必要ないで済まないケースが増えている現実

これから必要ないで済まないケースが増えている現実を解説します。

  • 加入率が高くないのに被害は増えているギャップ
  • 被害は情報漏えいだけじゃなく業務停止に広がる
  • 事故後対応の外注コストが跳ね上がりやすい

加入率が高くないのに被害は増えているギャップ

サイバー保険はまだ普及途上です。

実際、国内の加入率が高くないというデータも出ています。

一方で、上位記事が繰り返し触れている通り、被害そのものは収まっていません。

つまり、備えが薄いまま事故が起きる確率が上がっているのが怖いところです。

経営者としては、このギャップに気づけるかが分かれ目です。

周りが入っていないから自社も入らない、だと判断軸が他人任せになります。

自社の業務が止まったら何日耐えられるか、この一点で一度試算してみると、判断が急に現実的になります。

被害は情報漏えいだけじゃなく業務停止に広がる

サイバー事故の痛いところは、情報が漏れることだけじゃなく、業務が止まることです。

在庫・受発注・予約・会計が止まると、現場はすぐに手作業に戻れません。

しかも止まった時間は、売上だけじゃなく信用も削ります。

金曜の夕方にシステム障害が起きて、週末の売上がごっそり抜ける。

月曜に復旧の見通しが立たず、取引先の担当者に謝罪の電話を入れ続ける。

こういう時に効いてくるのは、保険金そのものだけじゃなく、事故対応の段取りと外部支援です。

なので、情報漏えいしなければ大丈夫ではなく、止まらない設計と止まった時の資金繰りで見るのがコツです。

事故後対応の外注コストが跳ね上がりやすい

サイバー事故は、まず原因究明と封じ込めが必要で、ここを社内だけで回せない会社がほとんどです。

その結果、フォレンジック調査、復旧支援、弁護士、広報支援など、外注費が連鎖して増えます。

現場感としては、火が出てから消防を探すようなものなので、緊急時ほど単価が上がりやすいです。

だからサイバー保険を検討するなら、保険金額だけでなく、事故時の相談窓口や支援サービスの有無まで含めて、実務として使えるかで見た方が外しません。

サイバー保険が向かない会社の特徴

これからサイバー保険が向かない会社の特徴を解説します。

  • そもそもデータもシステム依存も小さい
  • 自社で即復旧できる資金と体制がある
  • 取引先要件や契約上の要求がない

そもそもデータもシステム依存も小さい

極端に言うと、紙中心で回っていて、個人情報もほぼ持たず、システムが止まっても翌日に手作業で復旧できるなら、サイバー保険の優先度は下がります。

理由は、事故が起きても損害の上限が低く、被害が連鎖しにくいからです。

ただしゼロではなく、最低限の対策(認証やバックアップ)は別物として必要になります。

保険を見送るなら、その分は対策に回すのがバランスです。

自社で即復旧できる資金と体制がある

内部留保が厚く、IT担当・顧問弁護士・外部ベンダーがすぐ動ける体制がある会社は、保険を薄くする選択肢があります。

つまり、保険で移転するリスクを自社で保有できる状態です。

夜間に障害が起きても連絡網が回り、朝には封じ込めと復旧の判断ができる。

こういう会社は、限度額を下げたり、特約を絞ったりして最適化しやすいです。

取引先要件や契約上の要求がない

BtoBの取引では、契約でセキュリティ要件や保険加入を求められることがあります。

逆にそれが一切なく、情報も委託も少ない業態は、優先順位が下がりやすいです。

ただ、今は突然求められることもあるので、保険を完全に切るより、見積もりの取得と比較軸の準備だけは持っておくと動きが早いです。

加入を検討したい会社の特徴

これから加入を検討したい会社の特徴を解説します。

  • 個人情報・決済情報・機密情報を扱う
  • ECや予約など止まると売上が止まる導線がある
  • 委託先・取引先に迷惑が及ぶ構造がある

個人情報・決済情報・機密情報を扱う

顧客情報を扱う会社は、漏えい時に賠償や通知、信用回復のコストが発生しやすいので、サイバー保険の相性が良いです。

理由は、損害が社内完結しないからです。

社外対応が増えるほど、費用と時間が膨らみます。

顧客データが基幹システムに集まっている会社ほど、被害の半径が広がるので、優先度が上がります。

ECや予約など止まると売上が止まる導線がある

売上導線がWebやシステムに依存している会社は、事業中断の損失が直撃します。

復旧までの数日が、そのまま月次の未達に繋がるなら、保険は資金繰りの安定装置になります。

月末に予約システムが止まって、問い合わせが電話に集中し、現場が回らなくなる。

こういう状況を想像できるなら、検討対象です。

委託先・取引先に迷惑が及ぶ構造がある

サプライチェーンや委託構造があると、自社が原因で他社に波及するケースが出ます。

この時は、賠償だけでなく、原因究明の説明責任や再発防止の要求もセットで来ます。

だから保険の目的は、保険金をもらうことだけじゃなく、事故対応の実務を前に進めるための資金と支援を確保することになります。

補償される範囲とされない範囲(免責・要件)

これから補償される範囲とされない範囲を解説します。

  • 補償されやすい費用(賠償・調査・復旧・広報など)
  • 免責になりやすい論点(要件未達・重大な過失など)
  • 契約前に必ず確認したいポイント

補償されやすい費用(賠償・調査・復旧・広報など)

サイバー保険の基本は、賠償、事故対応費用、事業中断の損失をカバーする考え方です。

ざっくり整理すると、こうなります。

起きることお金が出やすい項目補償で狙うところ
情報漏えい謝罪・通知・賠償・訴訟対応賠償責任/法務費用
ランサム等で停止調査・復旧・代替運用事故対応費用
事業が止まる売上の減少・追加費用事業中断損失

この整理は、上位記事でもほぼ共通です。

免責になりやすい論点(要件未達・重大な過失など)

ここが一番の落とし穴で、保険に入っているのに支払われないを起こしやすい部分です。

たとえば、契約時に求められているセキュリティ要件を満たしていない、重大な過失と判断される、などの論点が出ます。

PSIの解説でも、支払い対象外や免責事項の確認が重要だと整理されています。

だから、補償内容だけ読んで安心するのではなく、支払われない条件を先に読むのが正攻法です。

契約前に必ず確認したいポイント

契約前に最低限ここだけは押さえておくと、必要ないかどうかの判断もクリアになります。

  • 補償の3本柱(賠償/事故対応費用/事業中断)が入っているか
  • 限度額と免責金額(自己負担)のバランス
  • 対象外条件(免責)の具体例
  • 事故対応支援(相談窓口、専門家手配)の有無

保険の前にやるべき最低限のセキュリティ対策

これから保険の前にやるべき最低限のセキュリティ対策を解説します。

  • 多要素認証と権限管理を先に固める
  • バックアップと復旧手順を言語化する
  • 事故対応フロー(連絡先・初動・証拠保全)を作る

多要素認証と権限管理を先に固める

保険より先に、多要素認証と権限の整理はやった方がいいです。

理由は、入口対策が弱いと事故確率が跳ねるからです。

保険は損害を軽くしてくれますが、事故を止めるのは対策側です。

現場では、退職者のアカウントが残っていた、全員が管理者権限だった、が普通に起きます。

ここを締めるだけで、事故の芽がかなり減ります。

バックアップと復旧手順を言語化する

バックアップがあっても、復旧できなければ意味がありません。

だから、どのデータを、どの頻度で、どこに、誰が戻すかまで言語化しておくのが大事です。

停電対応の手順書がある会社は多いのに、システム停止の手順書がない会社は多いです。

ここはすぐ差が出ます。

事故対応フロー(連絡先・初動・証拠保全)を作る

事故は最初の数時間で被害の大きさが決まります。

最低限、次の3点はテンプレ化しておくと強いです。

  • 社内連絡網(経営・情シス・総務・顧問先)
  • 初動(遮断・ログ確保・パスワード変更の順序)
  • 社外連絡(取引先・顧客・ベンダー)

これを整えると、保険が必要かどうかの判断も、より正確になります。

なぜなら、事故の時に何にいくらかかるかが見えるからです。

失敗しない選び方(補償設計・特約・見積もりの見方)

これから失敗しない選び方を解説します。

  • 自社の損害パターンを3つに分けて考える
  • 限度額・免責金額・対象外条件をセットで見る
  • 支援サービス(専門家・相談窓口)の有無で差が出る

自社の損害パターンを3つに分けて考える

選び方のコツは、補償項目から入るより、自社で起きる損害パターンから逆算することです。

おすすめはこの3分類です。

  • 外に迷惑をかける(賠償・訴訟・通知)
  • 中が止まる(調査・復旧・代替運用)
  • 売上が止まる(事業中断)

この3つのうち、どれが一番痛いかを決めると、必要な補償が自然に絞れます。

限度額・免責金額・対象外条件をセットで見る

見積もり比較でやりがちなのが、保険料だけで判断することです。

実際は、限度額が低い、免責が高い、対象外が広い、のどれかがあると、いざという時に使いにくくなります。

なので、比較表を作るなら最低でもこの3点は横並びにした方がいいです。

支援サービス(専門家・相談窓口)の有無で差が出る

サイバー事故は、専門家に早く繋がるかで復旧スピードが変わります。

上位記事でも、支援サービスの充実をメリットとして挙げています。

保険を必要ない寄りで考えている会社ほど、実はこの支援部分だけでも価値が出ることがあります。

保険金は使わなくても、相談窓口が使えるだけで初動が整うからです。

最後に:必要かどうかを1分で判断するチェックリスト

これから必要かどうかを1分で判断するチェックリストを解説します。

  • まずは不要寄りか必要寄りかを判定する
  • 必要寄りなら次に決めるのは補償の優先順位

まずは不要寄りか必要寄りかを判定する

結論から言うと、次のうち1つでも当てはまるなら、必要ないと言い切るのは危険です。

  • 個人情報や顧客データを扱う
  • EC・予約・決済など、止まると売上が止まる
  • 取引先や委託先に波及しうる
  • 事故時に数百万円〜数千万円を即出せない
  • 事故対応を任せられる人材が社内にいない

逆に、データもシステム依存も小さく、復旧資金も体制も揃っているなら、不要寄りの判断が成立しやすいです。

必要寄りなら次に決めるのは補償の優先順位

必要寄りだと分かったら、次はどの損害を最優先で守るかを決めます。

  • 優先1:事故対応費用(調査・復旧)
  • 優先2:賠償(通知・法務)
  • 優先3:事業中断(売上損失)

ここを決めてから見積もりを取ると、不要な特約にお金を払わずに済みます。

サイバー保険: まとめ

サイバー保険が必要ないと言われるのは、保険料が高く感じる・補償が複雑・自社は狙われないと思い込みやすいからです。

一方で被害は情報漏えいだけでなく業務停止や外注費の増大に広がり、資金と体制が薄いほどダメージが残ります。

不要寄りの会社はデータ依存が小さく即復旧できる体制がある場合。

必要寄りの会社は個人情報や売上導線が止まる構造、取引先へ波及する構造がある場合です。

契約は補償だけでなく免責・要件も確認し、保険より先に認証・バックアップ・初動フローを整えるのが近道です。

この記事のポイント
  • 判断は高いかどうかではなく、事故時に一括で払えるかで考える
  • 補償の3本柱(賠償/事故対応/事業中断)で整理すると分かりやすい
  • 免責・要件未達で支払われないリスクがあるので、対象外条件を先に読む
  • 保険の前に、多要素認証・バックアップ・初動フローを整えると事故確率が下がる

サイバー保険: よくある質問

サイバー保険は本当に中小企業でも必要ですか?

個人情報を扱う、売上がシステム依存、取引先へ波及する、事故時に即資金が出せない、のどれかがあるなら検討価値は高いです。逆にデータ依存が小さく、復旧資金と体制が揃っているなら優先度は下げられます。

入っても支払われないことがあるって本当ですか?

あり得ます。免責事項や、契約時に求められるセキュリティ要件を満たしていない場合などが論点になりやすいので、補償内容より先に対象外条件を確認するのが安全です。

保険に入る前に何をしておけばいいですか?

多要素認証と権限管理、バックアップと復旧手順、事故時の初動フロー(連絡網・証拠保全)を整えるのが優先です。ここが整うほど事故確率も損害規模も下がり、保険の見積もりも最適化しやすくなります。

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