社長に万が一があったとき、会社は気持ちの整理より先に、資金繰りと手続きに追われます。
運転資金、借入対応、死亡退職金、弔慰金、自社株、納税資金。
必要なお金が同時に動くのに、現金が足りなければ事業承継は止まります。
この記事では、法人の死亡保険を使って承継を前に進めるために、必要資金の棚卸しから受取人設計、保険種類の選び方、規程整備まで実務順にまとめます。
- 法人の死亡保険は、社長急逝でも会社を止めないための資金対策です。
- 退職金・弔慰金、運転資金、借入対応、自社株、納税資金を棚卸しして設計します。
- 規程整備と受取人の設計を先に固めると失敗が減ります。

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格
- 損害保険募集人資格
- 生命保険募集人資格
- 損害保険大学課程資格
- FP2級
保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%
法人の死亡保険を事業承継に使う結論
これから法人の死亡保険を事業承継に使う結論について解説します。
- 何を守るための保険か
- いつ入るべきか
何を守るための保険か(社長個人の保障では終わらない)
法人の死亡保険は、社長に万が一があった瞬間に会社の資金繰りと承継手続きを止めないための道具です。
事業承継は気持ちの問題に見えて、最後は現金が足りるかどうかで詰まります。
退職金・弔慰金、運転資金、借入対応、自社株の整理など、同時多発で資金が要る場面が起きやすいからです。
病院で急変対応が必要なときに、物品が揃っていないと動けないのと似ています。
必要資金が準備できている会社は、承継の手続きを進めながら、社員や取引先への説明にも余裕が出ます。
社長個人の生命保険だけで安心していると、会社側の現金が不足し、承継の設計を崩すことがあります。
法人の死亡保険は、会社側の不足を埋める前提で考えるのが安全です。
いつ入るべきか(早いほど選択肢が増える)
早めに入るほど、選べる商品が増えて、保険料負担も設計しやすくなります。
事業承継は、準備期間が長いほど「株価」「借入」「後継者育成」「納税資金」の調整が効きます。
準備が遅れると、短期で大きな保障を取りに行き、保険料が重くなりやすいです。
団塊世代が75歳超に入る流れの中で、承継問題が社会課題になっていることも、早期準備を後押ししています。
今日やるべきことは難しくありません。
必要資金を棚卸しして、死亡時に会社が困る金額を見える化するだけで、保険設計の精度が一気に上がります。
事業承継で詰まりやすいお金の論点(必要資金の棚卸し)
これから事業承継で詰まりやすいお金の論点について解説します。
- 退職金・弔慰金の原資
- 自社株移転に伴う納税資金
- 会社による自社株買取資金
退職金・弔慰金の原資
退職金・弔慰金は、会社が出すお金なので、会社側に現金があるかが重要です。
法人保険は、死亡保険金や解約返戻金を会社が受け取り、規程に基づいて死亡退職金や弔慰金の支払いに充てる発想が基本になります。
現場感として多いのは、社長が亡くなった後に「弔慰金をどうするか」が話題になってから、規程も資金もないことが発覚するケースです。
結果として、遺族への説明が難しくなり、社員の不安も増えます。
先に規程と原資を整えると、支払いの基準が明確になり、遺族対応も社内説明も落ち着きます。
自社株移転に伴う納税資金
自社株を後継者へ移すと、贈与税や相続税といった税金の支払いが発生し得ます。
納税資金がないと、後継者が資産を売る、借りる、親族で揉めるなどの問題が起きやすいです。
事前に死亡保険を使って納税原資を作る設計は、上位解説でも繰り返し出てくる王道です。
後継者に株を渡す話は気合で進みますが、納税資金だけは気合では出ません。
ここを先に押さえると、承継計画が現実的になります。
会社による自社株買取資金(現金化の準備)
会社が後継者から自社株を買い取る形で、後継者に現金を渡し、納税資金に充てる考え方があります。
ただし、自社株は会社が無制限に買えるわけではなく、分配可能額などの制約があるため、設計と確認が必要です。
保険金を会社が受け取ると、現金が増えるだけでなく、買戻しの枠にも影響するという説明もあります。
社長の急逝で承継が前倒しになったとき、後継者が「株は持ったけど現金がない」状態になりやすいので、ここまで織り込むと強いです。
死亡保険金の具体的な使い道(運転資金・借入返済・自社株・納税)
これから死亡保険金の具体的な使い道について解説します。
- 運転資金
- 借入金返済・金融機関対応
- 自社株の集約と買戻し
- 納税資金
急な売上低下に備える運転資金
死亡保険金は、書類が整えば比較的早期に受け取れるため、緊急時の運転資金に回しやすいです。
社長が営業の中心だった会社ほど、社長不在で売上が落ちたり、意思決定が止まったりします。
給与や外注費、家賃など、待ってくれない支払いを守るには、現金のクッションが必要です。
保険は利益を増やす道具ではありませんが、倒れないための時間を買う道具としては非常に優秀です。
借入金返済・金融機関対応の資金
経営者の死亡は、金融機関との関係にも影響が出やすく、追加の保証人や条件変更など、資金面の圧力がかかることがあります。
事前に保険金を「借入対応の資金」として見ておくと、交渉の主導権が取りやすいです。
資金がない状態で交渉すると、条件が厳しくなるのは当然です。
社内では感情が先に立ちますが、金融機関対応は数字で進むので、ここに現金を当てられるのは大きいです。
自社株の集約と買戻しの資金
自社株が分散していると、議決権の問題で経営が不安定になります。
保険金を使って株を集約する設計は、上位解説でも重要テーマです。
社長の相続が起きた後、親族間で株の扱いが決まらず、経営判断が遅れるケースは珍しくありません。
株は現金と違って分けにくいので、現金で調整できる仕組みがあると揉めにくいです。
保険を「株の交通整理代」として考えると、設計が分かりやすくなります。
相続税・贈与税の納税資金
納税資金に使えることは、生命保険活用の定番メリットとして複数の解説で明示されています。
納税のために資産を売る判断は、承継直後の混乱期にやると失敗しやすいです。
保険で現金を確保できると、焦って売らずに済みます。
納税資金は、後継者のメンタルにも直結します。
ここが整うと、後継者は本業に集中できます。
契約形態の選び方(法人契約と個人契約の違い)
これから契約形態の選び方について解説します。
- 法人契約が向くケース
- 個人契約が向くケース
- よくある設計ミス
法人契約が向くケース
会社が資金を必要とする論点(運転資金、借入対応、退職金・弔慰金原資、自社株買戻し)を守りたいなら、法人契約が軸になります。
法人が受け取って、規程に沿って支給する流れを作ることで、会社としての説明が通ります。
会社を守る設計に寄せるなら、まず法人契約を疑うのが基本です。
個人契約が向くケース
後継者や家族に直接、生活資金や納税資金を残したい設計は個人契約が合うことがあります。
掛け捨て型でコストを抑えつつ、納税・遺留分対策を狙う解説もあります。
会社が受け取るべき資金と、家族が受け取るべき資金を混ぜると、後で揉めます。
目的で分けると判断が早いです。
よくある設計ミス(受取人のズレ)
一番多い失敗は、必要資金が会社側にあるのに、受取人を個人にしてしまうズレです。
逆も同じです。
社長の想いとしては家族に残したいのは自然です。
ただ、会社が止まると、家族も困ります。
誰が困るかを基準に、受取先を分けて設計すると事故が減ります。
保険種類の選び方(終身・定期・団体定期など)
これから保険種類の選び方について解説します。
- 終身保険
- 定期保険
- 総合福祉団体定期
- 解約返戻金の考え方
終身保険(長期の死亡保障+退職金原資)
終身保険は、一生涯の死亡保障を確保しつつ、解約返戻金を活用できるタイプがあり、勇退退職金や承継資金の準備に使う発想が整理されています。
承継時期が読めない会社ほど、終身の考え方は相性が良いです。
定期保険(一定期間を大きく守る)
定期保険は一定期間の保障を厚くしやすく、一定期間に自社株買取資金などを準備したいケースに触れられています。
借入が大きい時期や、後継者が育つまでの期間など、リスクが高い期間だけ守る設計に向きます。
総合福祉団体定期(弔慰金・死亡退職金の整備)
総合福祉団体定期保険は、福利厚生制度に基づき、弔慰金・死亡退職金の財源確保に適していると説明されています。
事業承継というより、社内制度として「もしもの支給」を整える意味が強いので、規程とセットで考えると筋が通ります。
解約返戻金の考え方(キャッシュを守る視点)
解約返戻金を当てにしすぎると、解約タイミングで損失が出るリスクがあります。
短期解約で返戻金が払込保険料を下回る注意は明確に示されています。
資金繰りを守るなら、返戻金は「出たらラッキー」ではなく「出る前提の時期」を置いて設計します。
設計手順(誰を被保険者にして、誰が受け取るか)
これから設計手順について解説します。
- 被保険者の決め方
- 受取人の設計
- 金額の決め方
被保険者の決め方(社長だけでよいのか)
基本は社長・キーマン役員から検討します。
理由は、急逝時に売上・資金繰り・対外信用への影響が大きいからです。
社長だけに限定すると、実務が回らない会社もあります。
誰が抜けたら止まるかを一枚の紙に書き出すと、被保険者候補が見えます。
受取人の設計(会社受取→規程で支給)
法人保険の王道は、死亡保険金や解約返戻金を会社が受け取り、規程に基づいて死亡退職金・弔慰金などに充てる流れです。
規程がないと、支給の根拠が弱くなります。
根拠が弱い支給は、社内外の説明コストが跳ね上がります。
金額の決め方(必要資金から逆算する)
保険金額は、欲しい保障額からではなく、必要資金から逆算します。
事業承継で必要になる資金の例として、退職金、納税、自社株買取などが整理されています。
実務では、次の順で見積もると早いです。
- 最低6か月分の固定費(運転資金)
- 借入対応に必要な現金(返済・条件変更の余裕)
- 退職金・弔慰金として会社が支給したい金額
- 納税資金(後継者側で足りない分)
- 株の整理に必要な現金(買戻し・集約)
この合計をそのまま保険で埋める必要はありません。
足りない部分を保険で埋める発想の方が、資金繰りに優しいです。
税務・規程・手続きで失敗しない注意点
これから税務・規程・手続きで失敗しない注意点について解説します。
- 規程整備が先
- 死亡退職金の非課税枠
- 途中解約リスクと保険料負担
規程整備が先(退職金・弔慰金)
法人保険活用では、退職金・弔慰金規程の整備が必要だと明示されています。
さらに、役員退職金の支払いには株主総会決議が必要という注意もあります。
保険に入ってから規程を考えると、設計がねじれます。
規程が先だと、保険が後からきれいにハマります。
死亡退職金の非課税枠の考え方
死亡退職金は相続税の課税対象になり得ますが、「500万円×法定相続人の数」までは非課税枠として整理されています。
この枠を前提に「遺族にいくら残すか」を設計すると、無理のない支給設計になりやすいです。
途中解約リスクと保険料負担
法人保険は、保険料の継続負担が前提です。
支払いが滞ると失効の可能性があること、短期解約で返戻金が大きく目減りする可能性があることは、注意点として整理されています。
資金繰りを良くするための保険で、資金繰りを悪化させるのは本末転倒です。
月次の固定費と並べて、払っても耐えられる保険料に落とすのが安全です。
失敗パターンと見直しチェックリスト
これから失敗パターンと見直しチェックリストについて解説します。
- 節税目的が先行して崩れるケース
- 見直しのタイミング
- 相談先の役割分担
節税目的が先行して崩れるケース
事業承継の保険は、守る対象が「会社の継続」と「承継の完了」です。
そこを外して、節税だけで商品を選ぶと、必要なときに現金が足りない設計になります。
上位記事でも、事業承継で必要な資金(退職金・納税・自社株買取)を起点に設計する流れが中心です。
最初に必要資金を出すだけで、節税は副産物として整理できます。
見直しのタイミング(承継計画・株価・借入の変化)
見直しの合図は、この3つです。
- 後継者が決まった、または変更した
- 借入が増えた、保証の状況が変わった
- 利益が増えて株価が上がりそう
自社株の評価や納税資金の論点は、複数の解説で重要視されています。
年1回、決算のタイミングで棚卸しするだけでも、事故が減ります。
相談先(税理士・社労士・保険・金融機関)の役割分担
役割を分けるとスムーズです。
- 税理士:株価・納税・退職金の妥当性
- 社労士:弔慰金規程・福利厚生整備
- 保険:保障設計・受取設計・商品比較
- 金融機関:借入・保証・資金繰りの現実ライン
規程整備や資金目的の整理が重要である点は、上位解説でも繰り返し触れられています。
この分担を決めてから動くと、無駄なやり直しが減ります。
法人の死亡保険: まとめ
法人の死亡保険は、社長に万が一があったときに会社の資金繰りと事業承継を止めないための仕組みです。
退職金・弔慰金、運転資金、借入対応、自社株の集約、納税資金など必要資金を棚卸しし、誰が困るかで受取人を決めます。
終身・定期・団体定期を目的で選び、規程整備と手続きを先に固めると失敗が減ります。
- 事業承継の詰まりは感情より現金不足で起きる
- 会社受取→規程で死亡退職金・弔慰金に充てる設計が基本
- 納税資金と自社株対策は死亡保険活用の核
- 規程と株主総会決議など手続き面を先に整える
- 途中解約・保険料負担で資金繰りを壊さない
法人の死亡保険: よくある質問
今の保険が会社を守れているか、一度確認してみませんか?
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