売上も人手も限られている小規模法人にとって、「どこまで保険に入るべきか」は悩ましいテーマですよね。
勢いで節税商品に申し込んでしまうと、数年後に保険料が重くのしかかり、解約したら今度は税金が一気に増える…ということも珍しくありません。
この記事では、小規模な法人に必要な保険という視点から、社会保険などの公的制度、事業を守る損害保険、社長を守る生命保険、福利厚生や共済制度までを整理しながら、「小さな会社が本当に押さえておきたい保険」と、優先順位のつけ方をやさしく解説していきます。
- 小規模法人にとって必要な保険を「義務・事業継続・社長・従業員」の4つの視点で整理しました。
- 社会保険や損害保険、小規模企業共済・中退共など、公的制度と民間保険の役割分担が分かります。
- 節税ありきではなく、自社のリスクとキャッシュフローを軸に、優先順位をつけて保険を選ぶ考え方を解説します。

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格
- 損害保険募集人資格
- 生命保険募集人資格
- 損害保険大学課程資格
- FP2級
保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%
小規模法人に本当に「必要な保険」とは何か
これから小規模法人に本当に必要な保険について解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 小規模法人ならではのリスクと優先順位の考え方
- 「節税目的だけ」で入る法人保険が危険な理由
小規模法人ならではのリスクと優先順位の考え方
小規模法人にとって大事なのは、まず事業が止まらないようにすることと、社長個人の生活・将来を守ることです。
従業員が少ない会社だと、社長やキーパーソンが1人抜けただけで売上が一気に落ちたり、回らない業務が増えたりしがちです。
そのため保険の優先順位はざっくり次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 法人として加入義務のある社会保険などの公的保険
- 事故やトラブル時に多額の賠償が発生する損害保険(賠償責任など)
- 経営者・役員に万が一があった時の事業継続資金や整理資金を備える生命保険
- 従業員の福利厚生としての保険・共済
- 節税や資産形成の色合いが強い保険・共済
こうして並べてみると分かる通り、最初から節税色の強い商品ばかりを検討するのではなく、会社の「守り」を固める保険から優先的に考えていくのが現実的です。
「節税目的だけ」で入る法人保険が危険な理由
小規模法人の保険相談では、節税を前面に出したパンフレットや提案がとても多いです。
ただ、2019年以降の税制改正で、法人保険の損金算入ルールはかなり厳しくなっており、以前ほど単純に「入ればお得」という商品は減っています。
さらに、
- キャッシュフローが読みにくい長期の高額契約
- 解約返戻金のピーク時期と退職金支給時期が合っていない設計
- 将来の税負担や社会保険料まで見ていないシミュレーション
といった状態で契約してしまうと、数年後に「毎月の保険料が重すぎる」「解約したら逆に税金がドンと増えた」といった事態になりがちです。
小規模法人ほど、毎月の支出が売上に直結します。
節税メリットだけに目を奪われず、「この保険は何のリスクに備えるためのものか」「そのリスクは本当に自社にとって大きいのか」を、一度立ち止まって整理してから検討することが大切です。
小規模法人が加入必須の公的保険(社会保険・労災など)
これから小規模法人が加入必須の公的保険について解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 法人が原則加入しなければならない社会保険
- 労災保険・雇用保険の基礎と小規模法人での実務
法人が原則加入しなければならない社会保険
株式会社や合同会社などの法人は、原則として従業員だけでなく役員も含めて、健康保険と厚生年金保険に加入する義務があります。
社会保険に加入すると、
- 病気・ケガ・出産・老後などに対する公的な保障が手厚くなる
- 将来受け取る年金額が増える
- 社会保険に入っている会社として、採用面での信頼度が上がる
といったメリットがあります。
一方で、会社負担の保険料が発生するため、役員報酬や従業員の給与をどう設定するかで、毎月の固定費も変わってきます。
小規模法人では「社会保険料を抑えるためにあえて加入しない」という話題もよく出ますが、制度上の加入義務や将来の年金・信用面への影響を考えると、単純に「安くなるからやらない」という判断はかなりリスキーです。
実際には、専門家と相談しながら、報酬水準や家計全体の設計をセットで考える方が現実的です。
労災保険・雇用保険の基礎と小規模法人での実務
従業員を1人でも雇えば、原則として労災保険には必ず加入します。
雇用保険についても、所定の条件を満たす従業員がいれば加入が必要です。
- 労災保険:仕事中や通勤中のケガ・病気・死亡に対する補償
- 雇用保険:失業時の給付や育児・介護休業給付など
これらは民間保険ではなく「国の制度」なので、法人として加入しておくことが前提になります。
小規模法人の場合、パート・アルバイト中心の体制で、誰をどの保険に加入させるのか迷いやすい部分です。
グレーな運用を続けていると、後でまとめて保険料を支払うことになったり、従業員とのトラブルにつながったりすることもあります。
特に人を雇い始めた段階では、社会保険労務士など専門家に一度相談し、自社の雇用形態に合った手続きと加入状況を確認しておくと安心です。
事業を守るために最低限入っておきたい損害保険
これから事業を守るために最低限入っておきたい損害保険について解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 対人・対物の賠償責任保険はなぜ必須に近いのか
- 事務所・店舗・設備を守る火災保険・動産保険
対人・対物の賠償責任保険はなぜ必須に近いのか
小さな会社ほど、1件の大きな賠償事故で資金繰りが一気に悪化します。
店舗でお客様が転倒した、納品した商品の不良で取引先に損害を与えた、業務中に第三者の物を壊してしまった――。
こうした賠償リスクは「うちは小さい会社だから関係ない」とは言い切れません。
賠償責任保険に加入しておけば、
- 対人・対物事故が起きた場合の損害賠償金
- 弁護士費用などの費用
を一定の限度額まで保険からカバーできます。
万が一に備えるという意味では、小規模法人にとっても優先度の高い保険のひとつです。
業種によっては、取引条件として賠償責任保険への加入が求められるケースもあります。
自社のビジネスモデルでどんな賠償リスクがありそうか、一度洗い出してみると、必要な補償のイメージがつきやすくなります。
事務所・店舗・設備を守る火災保険・動産保険
火災や水漏れ、盗難などで事務所や店舗が使えなくなった場合、小規模法人は売上の大半を失ってしまうこともあります。
火災保険や動産総合保険を使えば、
- 建物や設備の損害
- 商品・什器などの損害
を一定範囲まで補償できます。
オフィスビルやテナントのケースでは、オーナー側で建物の火災保険に入っていても、テナント側の設備や商品まではカバーされていないことも多いです。
自社で購入した什器や在庫がどれくらいあるかを洗い出し、「ここが失われたらどれくらいのダメージになるか」を一度イメージしてみると、保険でどこまでカバーすべきかが見えてきます。
社長・役員を守る法人向け生命保険の考え方
これから社長・役員を守る法人向け生命保険の考え方について解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 社長に万が一があった時に足りなくなりやすいお金
- 小規模法人が選びやすい生命保険のタイプ
社長に万が一があった時に足りなくなりやすいお金
1人社長や少人数の法人では、社長が売上づくりの多くを担っていることがほとんどです。
その社長に万が一のことがあれば、
- 売上が急減し、すぐに資金繰りが苦しくなる
- 借入金の返済が滞り、金融機関との関係が悪化する
- 従業員や取引先への支払いができず、信用を失う
といった事態が起きやすくなります。
法人で社長を被保険者とした生命保険に入っておけば、死亡保険金を
- 借入金の返済
- 事業の整理・清算に伴う費用
- 後継者がいる場合の事業継続資金
として活用できます。
「社長が得をするためだけの保険」というよりも、会社と取引先・従業員を守るための備えというイメージに近いです。
小規模法人が選びやすい生命保険のタイプ
法人向けの生命保険には、定期保険、終身保険、養老保険、がん保険・医療保険などさまざまなタイプがあります。
小規模法人で検討しやすいのは、まず次のようなシンプルな設計です。
- 社長を被保険者とした定期保険
- 一定期間だけ、まとまった死亡保障を用意しやすい
- 掛け捨てのため保険料が比較的割安
- 必要に応じて、医療保険・がん保険(第三分野保険)
- 社長の長期入院・治療で会社の業務が止まるリスクに備えられる
積立性の高い保険は、キャッシュフローに余裕が出てきてからでも遅くありません。
まずは「社長に何かあった時に、最低いくらあれば会社が持ちこたえられるか」をざっくり試算し、その金額をカバーするために必要な保険金額や期間を検討していく流れが現実的です。
従業員がいる小規模法人で検討したい福利厚生保険・共済
これから従業員がいる小規模法人で検討したい福利厚生保険・共済について解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 医療保険・がん保険など第三分野保険の活用
- 養老保険や団体保険を使ったシンプルな福利厚生
医療保険・がん保険など第三分野保険の活用
社員数が少ない会社では、1人の長期離脱が業務に与える影響が大きくなります。
第三分野保険(医療保険・がん保険・傷害保険など)は、役員や従業員の入院・手術・長期療養のリスクに備える保険です。
会社負担で一定の医療保険に加入しておけば、従業員にとっても
- 病気・ケガに対する安心感が増す
- 家族から見た会社への信頼度が上がる
といったプラスがあります。
とはいえ、小規模法人では福利厚生に使える予算も限られています。
最初から全社員分のがん保険をフルセットで用意するのではなく、役割や年齢なども踏まえて「ここだけは押さえたい最低限の保障」を決めていくと無理がありません。
養老保険や団体保険を使ったシンプルな福利厚生
従業員の退職金や長期勤務へのインセンティブとして、養老保険や団体保険を活用するケースもあります。
代表的な例としては、養老保険を使ったいわゆる「ハーフタックスプラン」があります。
- 契約者:法人
- 被保険者:役員・従業員
- 死亡保険金受取人:遺族
- 満期保険金受取人:法人
という形で、保険料の一部を福利厚生費として経費計上しつつ、将来の退職金原資も準備できる仕組みです。
ただし、従業員の一部だけを対象にすると給与課税になる可能性があるなど、税務上の注意点もあります。
こうした設計を検討する際は、税理士や保険の専門家と連携しながら、制度全体のバランスを見て決めるのが安心です。
小規模企業共済・中退共・経営セーフティ共済など制度活用
これから小規模企業共済・中退共・経営セーフティ共済など制度活用について解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 経営者の退職金準備に役立つ小規模企業共済
- 従業員退職金の中退共と、取引先倒産に備える経営セーフティ共済
経営者の退職金準備に役立つ小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の会社役員が、廃業・退職時の生活安定や事業再建のために積み立てる共済制度です。
掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。
法人役員として加入する場合には、
- 履歴事項全部証明書(法人登記簿)など、役員であることを証明する書類
- 申込書や口座振替の手続き書類
などが必要です。
小規模法人の場合、
- 会社としては、社長やキーパーソンの万が一に備える法人保険
- 個人としては、小規模企業共済で退職後の生活資金を積み立てる
という形で、法人と個人の両方でバランスよく備える設計が取りやすくなります。
従業員退職金の中退共と、取引先倒産に備える経営セーフティ共済
従業員の退職金については、中小企業退職金共済(中退共)という公的な退職金制度があります。
- 掛金は法人の場合、全額が損金算入
- 国の助成を受けられる期間がある
- 従業員ごとに掛金額を設定できる
といったメリットがありますが、原則として従業員全員加入が前提のため、小規模法人にとっては掛金負担が大きく感じられるケースもあります。
また、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度として「経営セーフティ共済」があります。
- 掛金は全額損金算入
- 取引先が倒産した場合、掛金総額の10倍(最大8,000万円)の範囲で無担保・無保証の借入が可能
といった特徴があり、いざという時の資金調達手段として役立ちます。
こうした共済制度は、民間の保険と比べてコストパフォーマンスが高いことも多いですが、「借入」である点や元本割れリスクなども含め、制度の仕組みを理解したうえで活用することが大切です。
小規模法人が保険を選ぶステップと、よくある失敗・見直しポイント
これから小規模法人が保険を選ぶステップと、よくある失敗・見直しポイントについて解説します。
ここでは次の内容を取り上げます。
- 小規模法人向け「保険選び7ステップ」
- 小規模法人がやりがちな保険の失敗例と見直し方
小規模法人向け「保険選び7ステップ」
小規模法人が保険を選ぶときは、次のようなステップで考えると整理しやすくなります。
- 会社の現状を整理する
- 売上規模・利益水準・借入状況
- 従業員数・雇用形態
- 社長の年齢・家族構成・持株比率
- 事業のリスクを書き出す
- 人のリスク(社長・従業員の病気・ケガ・死亡)
- 物のリスク(建物・設備・在庫など)
- 法的リスク(賠償責任・情報漏えいなど)
- すでに入っている公的保険・民間保険を洗い出す
- 義務的なもの・優先度が高いものから押さえる
- 社会保険・労災・雇用保険など公的制度
- 賠償責任保険など、事故1件で致命傷になりうるリスクへの備え
- 予算の範囲を決める(売上の何%まで保険に回すか)
- その範囲内で、法人保険・共済・個人保険を組み合わせる
- 毎年(少なくとも数年に1回)は見直す
この流れで進めると、「何となく良さそうだから」という理由だけで商品を選ぶのではなく、会社の状況に合った保険設計がしやすくなります。
小規模法人がやりがちな保険の失敗例と見直し方
小規模法人でよくある失敗例としては、次のようなパターンがあります。
- 節税メリットだけを見て、高額かつ長期の保険に入ってしまう
- 社長個人のライフプランを考えずに、法人保険だけで老後資金を準備しようとする
- 業種に合わない損害保険に加入している(逆に本当に必要な賠償リスクが抜けている)
- 会社の規模や従業員数が変わっているのに、保険内容を放置している
見直しのポイントとしては、
- 「この保険は、どのリスクに備えるためのものか」を明文化する
- 似たような保障が重複していないかをチェックする
- 毎月の保険料がキャッシュフローを圧迫していないかを確認する
- 税制やルールが変わっていないか、専門家に確認する
といった点を押さえておくと良いでしょう。
なお、ここでお伝えしている内容はあくまで一般的な考え方です。
具体的な契約や見直しを行う場合は、税理士・社会保険労務士・保険の専門家などに相談しながら、自社の状況に合った設計を検討してください。
小規模法人の保険:まとめ
小規模法人にとって必要な保険は、まず「義務として入る公的保険」と「入らないと事業が止まりかねない保険」を押さえることが出発点になります。
社会保険・労災・雇用保険を前提に、賠償責任や火災などの損害保険、社長の万が一に備える生命保険を優先的に検討し、そのうえで従業員向けの福利厚生保険や、小規模企業共済・中退共・経営セーフティ共済といった制度を組み合わせるイメージです。
節税メリットだけを追いかけると、キャッシュフロー悪化や将来の税負担増につながることもあるので、自社のリスク・予算・成長計画をふまえた「保険選びのステップ」と定期的な見直しが重要になります。
- 公的保険(社会保険・労災・雇用保険)は前提条件として整理する
- 小規模法人ほど、賠償責任・火災など事業を止めるリスクへの備えが優先
- 社長の万が一に備える法人向け生命保険は「会社を守る保険」として考える
- 小規模企業共済や中退共・経営セーフティ共済は、民間保険と組み合わせると効果的
- 保険は節税ありきではなく、リスクとキャッシュフローを軸に選び、定期的に見直す
小規模法人の保険:よくある質問
今の保険が会社を守れているか、一度確認してみませんか?
もし、
- 自社の加入中の保険が適切に設計されているか不安
- 今の保険が本当に会社を守れているのかわからない
- 見直したいけれど、どこから手をつければいいのか迷っている
という状況であれば、一度プロ目線で“会社のリスク構造”を棚卸ししておくと安心です。
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