法人保険を社長だけにかける前に知っておきたいこと【2019年税制改正対応・損金区分表つき】

法人保険を社長だけにかける前に知っておきたいメリットと落とし穴

会社の保険について考えるとき、「とりあえず社長だけ法人保険に入っておけば安心」と言われることは少なくありません。中小企業では社長が倒れると、売上も資金繰りも一気に不安定になります。その意味で社長だけを手厚く守る法人保険は、有効な選択肢のひとつです。

一方で、2019年の税制改正で損金算入ルールが大幅に見直されたため、「以前と同じつもりで加入したら期待した効果が得られなかった」というケースも増えています。また、税務上の取り扱いを誤ったり、従業員とのバランスを考えずに加入したりすると、「コストが増えただけだった」という結果にもなりかねません。

この記事では、法人保険を社長だけにかけるときのメリット・デメリットから、2019年税制改正後の損金算入ルール(4区分テーブル)、必要保障額の計算式、保険種類別の比較、個人保険との使い分け、検討ステップまで、社長目線でわかりやすく整理します。

【保険コンサルタント:長谷川】保有資格

保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%

目次

社長だけが入る法人保険はアリ?まず押さえたい基本

社長だけが入る法人保険の基本的な考え方について、2つのポイントから解説します。

社長だけを被保険者にする法人保険の仕組み

社長だけを対象にした法人保険は、契約者・保険料負担者を法人、被保険者を社長にした保険のことです。社長に万が一があったとき、会社に保険金を入れて事業継続や借入金の返済に充てたり、退職金の原資にしたりする目的で使われます。

中小企業では、社長が倒れると売上も資金繰りも一気に悪化しやすいですよね。そのリスクに備えて、あえて社長だけを手厚く保障する、という考え方自体は決しておかしなものではありません。

一方で、保険は「誰が契約者か」「誰を被保険者にするか」「保険金の受取人は誰か」で税務上の扱いが大きく変わります。ここを理解しないまま契約してしまうと、思っていた効果が得られなかったり、想定外の課税を受けたりすることがあります。

社長だけの法人保険は、経営リスクに備える意味では有効ですが、税務や従業員への説明も含めて「全体のバランス」を見ながら設計することが大切です。

よくある誤解「節税のためにとりあえず社長だけ入る」

社長だけの法人保険でよくあるのが「とりあえず税金が減ると言われて入った」というパターンです。しかし、法人で加入する生命保険は、法人税そのものを減らす魔法のような商品ではなく、多くの場合は「課税の繰り延べ効果」、つまり税金の支払い時期を後ろにずらす効果にとどまります。

「節税になります」と強調されると魅力的に聞こえますが、実際には次のようなリスクもあります。

  • 解約時に多額の益金計上が発生する
  • 想定より早く解約して返戻率が低いまま終わる
  • 税制改正で損金算入が制限される

社長だけ入る法人保険は、「会社のリスクにどう備えるか」「社長と家族の生活をどう守るか」という本来の目的から逆算して選ぶものです。課税の繰り延べ効果だけをゴールにしてしまうと、後から「こんなはずじゃなかった」という状態になりやすいので、注意したいところです。

社長だけを被保険者にする法人保険のメリット・デメリット

社長だけを対象にした法人保険のメリットとデメリットについて、2つのポイントから解説します。

会社と家族を守るという意味でのメリット

社長だけを対象にした法人保険の一番のメリットは、社長に万が一があったときの「会社のダメージを最小限に抑えられること」です。

具体的には、事業継続資金・借入返済・退職金原資などに活用されます。

中小企業では、取引先や金融機関との関係も「社長個人の信用」に依存しているケースが多く、社長が突然いなくなると売上も信用も急落しがちです。そうしたときに法人保険からまとまった保険金が入れば、従業員の雇用維持や急な返済への対応など、会社を守るための時間を稼ぐことができます。

個人の生命保険と違い、法人契約にすることで、保険金を会社が受け取り、そのまま事業資金として使いやすいのもポイントのひとつです。

従業員・税務面でのデメリットとリスク

一方で、社長だけを対象にした法人保険には、いくつかのデメリットやリスクもあります。

まず、人事面では「社長だけ保険で守られていて、従業員には何もない」と見えてしまうと、不公平感が生まれやすくなります。福利厚生としての生命保険は、本来「全役員・全従業員」を対象にすることが前提とされている商品も多く、社長だけにかけると税務上「給与」として扱われる場合もあります。

また、税務上の取り扱いを誤ると、損金算入の否認・想定外の課税といったことも起こり得ます。

さらに、解約返戻金の大きい保険を社長だけにかけている場合、解約や名義変更のタイミングで大きな課税が発生し、キャッシュフローを圧迫するリスクもあります。

社長だけの法人保険は、メリットとデメリットの両方を理解したうえで、「会社・社長・従業員のバランスが取れた設計になっているか」を意識することが大事です。

社長だけ加入のときに必ず押さえたい税務・経理処理のポイント

社長だけが加入するときの税務・経理上の注意点について、4つのポイントから解説します。

2019年税制改正で変わった損金算入ルール(4区分テーブル)

法人保険の保険料がどれだけ損金に算入できるかは、2019年の国税庁通達改正で大きく見直されました。改正前は全額損金になる商品も多くありましたが、改正後は「最高解約返戻率」に応じた4つの区分で算入割合が決まる仕組みになっています。

定期保険・第三分野保険(医療保険・がん保険など)の損金算入4区分

最高解約返戻率 損金算入割合 資産計上割合 ポイント
50%以下 全額損金 なし 掛け捨てに近い商品が対象
50%超70%以下 60%損金 40%資産計上 解約返戻金が中程度の商品
70%超85%以下 40%損金 60%資産計上 貯蓄性の高い商品
85%超 当初10年:70%損金・30%資産計上。11年目以降:90%損金(積立段階)。解約返戻金が下がり始めた時点から損金割合を変更 ケースにより異なる 返戻率の高い経営者保険が対象

上記は原則的な扱いで、保険期間の長さや解約返戻金のピーク時期によってさらに細かな計算が必要な場合があります。具体的な損金処理は、保険会社から交付される「税務上の取り扱いの説明資料」と顧問税理士の確認をあわせて行ってください。ご事情によって最適な計上方法は異なります。

30万円特例:年間保険料が30万円以下なら全額損金

医療保険・がん保険などの第三分野保険については、最高解約返戻率にかかわらず、被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下であれば全額損金に算入できる特例があります。

社長だけの医療保険を法人契約で準備する場合、この30万円特例の範囲に収まるよう設計すると、経理処理が比較的シンプルになります。ただし、特例の適用条件の詳細は顧問税理士にご確認いただくことを推奨します。

保険の種類と受取人で変わる税務上の扱い

法人保険は、保険の種類(定期保険・養老保険・医療保険など)と、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の組み合わせで、税務上の扱いが大きく変わります。

たとえば、保険料の何割を損金にできるのか、どこまで資産計上になるのか、解約時にどれだけ益金が出るのかがパターンごとに違います。

社長だけの法人保険を検討するときは、商品パンフレットだけでなく「税務上の取り扱いの説明資料」まで必ず確認し、顧問税理士にも共有しておくことが欠かせません。

養老保険・福利厚生プランを社長だけにかけるとどうなるか

福利厚生を目的とした養老保険や「福利厚生プラン」は、本来「全役員・全従業員」が対象であることが前提です。

この手の保険を社長だけにかけると、給与扱いになる可能性があります。

「福利厚生プラン」と名前がついているからといって、社長だけに有利な形で使えるわけではありません。社長だけに手厚くしたい場合は、福利厚生プランではなく、経営者向けの保険(キーマン保険・経営者保険など)を選ぶほうが筋が通りやすくなります。

節税目的だけで加入すると危険なケース

法人保険の中には、かつて「節税保険」と呼ばれた商品もありましたが、2019年以降の税制改正で、多くが厳しく制限されています。前述の損金算入4区分が設けられたことで、グレーな手法を前提にした加入は税務リスクを抱えることになります。

社長だけの法人保険でも同じで、「○年後に解約すれば返戻金で退職金が準備できて、しかも節税できます」といった提案は、必ず税理士の目線でチェックしてもらうべきです。

課税の繰り延べ効果はあくまで副産物であり、「会社のリスクに備える」「社長・家族を守る」という本質的な目的を言語化してから、保険を選ぶようにしたいところです。

社長の法人保険 必要保障額の考え方と計算式

社長だけの法人保険を設計するとき、「どれくらいの保障額が必要か」が最初の壁になります。感覚ではなく、次の考え方をベースに算出するのが基本です。

必要保障額の基本的な計算式

多くの保険会社や保険代理店が使う目安の式は、次のとおりです。

必要保障額 = 月次運転資金 × 経営が落ち着くまでの月数(6〜10か月)+ 借入残高

各要素のイメージ:

  • 月次運転資金: 人件費・家賃・仕入れ・借入返済など、毎月必ず出ていくお金の合計
  • 経営が落ち着くまでの月数: 後継者が育つまで、あるいは清算や事業譲渡が完了するまでの期間。一般的には6〜10か月を目安に設定するケースが多い
  • 借入残高: 会社が銀行や親族などから借りている借入金の残高合計

たとえば、月次運転資金が500万円で経営安定まで8か月、借入残高が3,000万円の会社であれば、目安の必要保障額は「500万円×8か月+3,000万円=7,000万円」というイメージです。

これはあくまで概算の目安です。実際には、社長の個人的な生活費・家族の生活保障・相続税の納税資金なども加味して設計するケースもあります。また、事業の性質や借入の構造によってご事情は異なりますので、具体的な計算は顧問税理士や保険の専門家とあわせて行うことをお勧めします。

「会社を守る保障」と「家族を守る保障」を切り分ける

必要保障額を考えるときは、「何のための保障か」を切り分けておくと整理しやすくなります。

  • 会社を守る保障(事業継続・借入返済・従業員の雇用維持)→ 法人契約で準備
  • 家族の生活を守る保障(遺族の生活費・子どもの教育費など)→ 個人保険で準備

両方をひとつの法人保険でカバーしようとすると、保険金額が膨らんで保険料の負担も重くなりがちです。役割を分けて設計することで、会社のキャッシュフローと家族の生活保障をバランスよく確保しやすくなります。

社長だけ入るときに選ばれやすい法人保険の種類と役割

社長だけを対象にしたときに選ばれやすい法人保険の種類について、比較テーブルとあわせて解説します。

保険種類別 損金区分・用途比較テーブル

どの保険が何に向いているか、損金の扱いとあわせて一覧で確認できます。

保険種類 保障の目的 損金の目安 解約返戻金 向いている使い方
定期保険(掛け捨て型) 死亡・高度障害時の事業継続資金 全額損金(返戻率50%以下の場合) 原則なし 事業保障・借入返済対策
長期平準定期保険 死亡保障+長期積立 最高返戻率によって40〜60%損金 あり(ピーク後に下がる) 退職金準備(長期)
逓増定期保険 死亡保障+短期集中積立 返戻率区分による あり(短期間でピーク) 退職金準備(短期)
養老保険 満期または死亡時に保険金 原則1/2損金・1/2資産計上 あり(満期で戻る) 退職金・福利厚生(全員加入が前提)
医療保険・がん保険 入院・手術等の就業不能リスク 30万円以下/人・年なら全額損金 原則なし(掛け捨て) 社長の就業不能対策
終身保険 死亡保障+資産積立 原則全額資産計上(損金不算入) あり(解約金が大きい) 退職金準備・相続対策

この表は一般的な目安です。商品ごと・加入条件ごとに扱いが変わりますので、具体的な設計は必ず顧問税理士と保険の専門家にご確認ください。

事業継続資金を確保するための死亡保険・定期保険

社長だけを対象にした法人保険の”王道”は、死亡保険(定期保険)です。

社長に万が一があったときに、事業継続資金・借入返済原資を確保しておくことが目的になります。

保障を厚くしやすい一方で、解約返戻金のない「掛け捨てタイプ」を選べば、保険料を比較的抑えながら必要な保障だけ確保することも可能です。

「会社を守るために最低限どれくらいの保障が必要か」を、借入残高や月次運転資金から逆算して設計していくイメージです。前述の計算式をベースに検討してみてください。

働けなくなったときをカバーする就業不能・医療系の保険

最近は「亡くなるリスク」だけでなく、「長期間働けなくなるリスク」に備える保険も増えています。

就業不能保険や医療保険を社長だけにかけておくと、社長が病気やケガで長期離脱したときの役員報酬・固定費カバーをしやすくなります。

前述のとおり、医療保険・がん保険を法人契約で社長だけにかける場合、年間保険料が被保険者1人あたり30万円以下であれば全額損金に算入できる特例があります。経理処理がシンプルになるうえ、保障としても有効な選択肢です。なお、具体的な要件は顧問税理士にご確認ください。

また、法人名義で医療保険に加入し、保険料払い込み後に社長個人へ名義変更して退職金代わりに渡す、といった使い方も紹介されていますが、名義変更時の評価額に対する課税や、経理処理のルールには細かな注意点があります。

退職金準備の保険種類別設計(長期平準定期・逓増定期・養老の使い分けと出口戦略)

社長の退職金や事業承継資金を準備する目的で積立型の経営者保険を活用する場合、使う保険の種類によって特性が異なります。

長期を見据えるなら長期平準定期保険または養老保険

保険期間が長く、じっくり積み立てていくイメージです。長期平準定期保険は、死亡保障と資産形成を兼ねながら、解約返戻金のピークが15〜20年後に来るタイプが多く、退職時期に合わせて設計しやすいとされています。養老保険は満期に保険金が戻る仕組みで、全役員・全従業員が対象の設計であれば保険料の1/2を損金算入できる場合があります。

短期で集中的に積み立てるなら逓増定期保険

5〜10年程度で解約返戻金がピークを迎えるタイプが多く、比較的短い期間で退職金の原資を準備したい場合に検討されることがあります。ただし、損金算入の割合は最高解約返戻率の区分によって変わります。

出口戦略を事前に設計しておくことが重要

積立型の保険は、解約のタイミングと益金の扱いを事前に設計しておかないと、「解約したら多額の益金が出て、結局税負担が増えた」という結果になりかねません。

解約返戻金を退職金として受け取る場合、「退職所得控除」が活用できるよう、退職金規程を先に整備しておくことも大事なポイントです。具体的な出口設計は、保険会社のシミュレーション表と顧問税理士の意見をあわせて確認するようにしてください。ご事情によって最適な出口戦略は異なります。

社長個人名義で入る保険との違いと上手な使い分け

法人名義と個人名義の違いと、その使い分け方について解説します。

法人名義と個人名義で変わるお金の動きと保障範囲

法人名義の保険と個人名義の保険は、保険金の受け取り方・税務処理・使い道が違います。

法人名義の場合は会社が保険金を受け取り事業資金として使える一方、個人名義の場合は個人・家族が直接受け取り生活保障として活用できます。

会社を守る目的の保障は法人名義で、家族や自身の生活を守る保障は個人名義で、と役割を分けて考えると整理しやすくなります。

社長の老後資金・医療保障をどこまで法人で準備するか

社長だけの法人保険では、「老後の医療費や生活費まで会社で面倒を見たい」というニーズもよく出てきます。法人で積立をしておき、退職時に名義変更や退職金として渡すイメージですね。

このときのポイントは、「どこまでを法人で準備するか」「どこからは個人で準備するか」の線引きをしておくことです。

すべてを法人側でやろうとすると、法人の資産・費用と個人の資産・費用の境界が曖昧になるといった歪みが出やすくなります。

「会社を続けるために必要な最低限の保障は法人で」「それ以上の老後のゆとりは個人で」という考え方でバランスを見ると、無理のない設計になりやすいです。

社長だけ入る前にチェックしたいリスクと注意点

社長だけの法人保険に入る前に確認しておきたいリスクと注意点を解説します。

借入金の個人保証リスク(社長死亡時の連帯保証問題)

中小企業では、社長が銀行借入の連帯保証人になっているケースが少なくありません。社長が死亡した場合、金融機関から連帯保証人の立場で借入金の一括返済を求められる可能性があります。

このリスクに備えるには、社長の死亡時に法人保険から保険金を受け取り、借入金の返済に充てられる設計にしておくことが有効です。前述の必要保障額の計算式に「借入残高」を組み込んでいるのも、このリスクへの対応を考慮したものです。

個人保証の解除に向けた「経営者保証ガイドライン」の活用なども選択肢のひとつですが、保険での備えと組み合わせることで、会社と家族の両方を守る体制を作りやすくなります。ご事情によって最適な対応策は異なりますので、顧問税理士や金融機関ともご相談ください。

従業員とのバランス・説明責任の問題

社長だけを対象にした法人保険は、設計次第で「社長のための保険」に見えやすくなります。その一方で、従業員に対して何の説明もしないままだと、「自分たちには何もないのに」という不公平感につながることもあります。

「なぜ社長だけなのか」「会社の存続・雇用を守るためである」という目的を、社内のキーパーソンには共有しておくと、理解を得やすくなります。

解約返戻金・名義変更時の課税リスク

解約返戻金のある法人保険では、解約時や社長個人への名義変更時に「思った以上に税金がかかった」というケースが少なくありません。

解約時の益金計上・名義変更時の評価課税といった点は、加入前からシミュレーションしておく必要があります。

保険会社からもらう「返戻金の推移表」だけでなく、税理士に「この条件で解約・名義変更したとき、どれくらい税金がかかるか」を数字で出してもらうと安心です。

会社のキャッシュフローと保険料負担の見極め方

社長だけの法人保険は、保険金額を大きく設定しがちな分、保険料負担も重くなりがちです。「課税を繰り延べられるから」と高額な保険料を組んでしまうと、景気が悪化したときや売上が落ちたときに真っ先に重くのしかかってきます。

保険料が月次・年次の固定費に占める割合、売上が20〜30%減った場合でも支払い続けられるかといった視点でキャッシュフローをチェックし、「会社が無理なく払える範囲」で設計することが大切です。

失敗しないための相談相手と検討ステップ

社長だけの法人保険で失敗しないための相談相手と、検討のステップについて解説します。

まずは顧問税理士と共有したい論点

社長だけの法人保険を検討するとき、最初に相談したいのは顧問税理士です。税理士には、損金算入の範囲・法人の財務バランスとの整合性・解約・名義変更時のシミュレーションといった税務・会計の観点から、無理のない範囲かどうかを見てもらいます。

保険の提案書をそのまま渡して、「この前提なら、税務上どんなリスクがありそうか」「もっとシンプルにできる設計はないか」といった質問を投げると、ぐっと現実的なプランに近づきます。

特に2019年税制改正後は損金算入ルールが複雑になっているため、加入前に税理士が「損金算入の説明資料を確認する」というステップを省くのはリスクが高いといえます。

保険会社・乗合代理店に聞くべき具体的な質問

保険会社や乗合代理店に相談するときは、次のような質問を用意しておくと比較しやすくなります。

  • 「最高解約返戻率はどれくらいか。損金算入の区分(全額/60%/40%)はどれに該当するか」
  • 「解約返戻率のピークはいつか、そのときの益金計上はどれくらいか」
  • 「税制改正があった場合、この設計はどう変わるか」
  • 「30万円特例は適用できるか」(医療保険の場合)

営業トークだけでなく、「デメリット」「想定されるリスク」をきちんと説明してくれる担当者かどうかも、大事なチェックポイントです。

最後に社長自身が判断するときのチェックリスト

最終的に加入するかどうかを決めるのは社長自身です。そのときに、次のような問いを自分に投げかけてみてください。

  • 「この保険で守りたいのは会社か、家族か、自分の老後か」
  • 「必要保障額(月次運転資金×月数+借入残高)と保険金額は対応しているか」
  • 「保険料を払い続けても会社のキャッシュフローは健全か」
  • 「税理士に見せて問題ないと言われたか」
  • 「2019年改正後の損金区分を確認したか」
  • 「課税の繰り延べ以外の目的が明確にあるか」

これらにきちんと答えられる状態になっていれば、「社長だけが入る法人保険」も、会社と自分と家族を守るための有効なツールとして活かしていくことができるはずです。

※本記事の内容は一般的な情報であり、具体的な保険加入・税務判断は、必ず税理士・社会保険労務士・保険会社等の専門家にご相談ください。

まとめ

社長だけが入る法人保険は、会社の事業継続や借入金返済、社長の退職金・医療保障などに役立つ一方で、税務や従業員とのバランスを誤ると期待した効果が得られない結果になりかねません。

2019年の税制改正で損金算入ルールは最高解約返戻率に応じた4区分(50%以下=全額損金、50〜70%=60%損金、70〜85%=40%損金、85%超=70%損金など)に整理されており、改正前の商品設計と同じ感覚で加入すると税務上の想定が外れるリスクがあります。医療保険・がん保険については年間30万円以下/人の場合に全額損金となる特例があります。

社長だけの加入を検討する際は、「月次運転資金×経営安定までの月数+借入残高」で必要保障額を算出し、借入金の個人保証リスクも視野に入れて保障額を設計することが大切です。保険種類は事業保障・退職金準備・就業不能対策の3つの目的別に選び、退職金準備では長期平準定期・逓増定期・養老の特性と出口戦略を事前に確認してください。

最終的には、顧問税理士とシミュレーションを行い、保険会社・乗合代理店にはデメリットまで含めて確認したうえで判断することをお勧めします。

よくある質問

Q. 社長だけが入る法人保険は税務上問題になりますか?

目的が事業継続や借入金返済など合理的で、契約形態や経理処理が税法に沿っていれば、社長だけの加入だからという理由だけで否認されるものではありません。ただし、福利厚生名目の養老保険を社長だけにかけると給与扱いになるなど、税務上のルールはあります。具体的な設計は必ず顧問税理士に確認してください。

Q. 「節税保険」として法人保険を使えますか?

2019年の税制改正で、解約返戻率の高い保険への損金算入は最高解約返戻率の区分(50%以下・50〜70%・70〜85%・85%超)に応じた制限が設けられており、かつての「全額損金型の節税保険」は大幅に整理されました。法人保険の効果は「課税の繰り延べ」であることを前提に、事業保障や退職金準備といった本来の目的で活用することをお勧めします。

Q. 30万円特例とは何ですか?

医療保険・がん保険などの第三分野保険について、被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下であれば、最高解約返戻率の区分によらず全額損金に算入できる特例です。社長だけの医療保険を法人契約で準備する際に活用できます。具体的な適用要件は顧問税理士にご確認ください。

Q. 個人保険と法人保険、どちらで入ればいいですか?

役割が違うと考えると整理しやすいです。会社を守る目的(事業継続・借入返済・退職金原資など)は法人保険で、家族の生活防衛や個人の老後資金・医療費は個人保険で備えるイメージです。どこまで法人で準備し、どこから先は個人で準備するかを線引きしたうえで設計するとバランスが取りやすくなります。

Q. 必要保障額はどうやって計算しますか?

基本的な考え方は「月次運転資金×経営が落ち着くまでの月数(6〜10か月)+借入残高」です。月次運転資金には人件費・家賃・仕入れ・借入返済などが含まれます。これはあくまで目安で、社長個人の生活費や相続対策なども加味してご事情に応じた計算を行うことをお勧めします。

Q. 借入金の個人保証がある場合、保険でカバーできますか?

社長が連帯保証人になっている借入金については、社長死亡時に一括返済を求められるリスクがあります。法人保険の保険金額の設計に借入残高を組み込んでおくことで、そのリスクに備えることができます。具体的な保障額の設定は、借入残高の推移や金融機関との契約内容を踏まえて顧問税理士・保険担当者とご相談ください。

Q. 退職金準備に向く保険と向かない保険の違いは?

長期的な積立には長期平準定期保険や養老保険が、短期間での積立には逓増定期保険が選ばれることが多いです。終身保険は全額資産計上になり損金算入はできませんが、安定的な積立として活用されるケースもあります。いずれも解約時の益金計上と退職金受け取り時の税務処理を事前に設計しておくことが重要です。退職金規程の整備と組み合わせて顧問税理士にご相談ください。

今の保険が会社を守れているか、一度確認してみませんか?

もし、「今の法人保険が本当に会社のリスクをカバーできているか分からない」「社長だけ入っているが2019年改正後のルールを踏まえた設計になっているか不安」「解約・名義変更を考えているが税務上の影響が心配」という状況であれば、一度プロ目線で”会社のリスク構造”を棚卸ししておくと安心です。

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