賃貸アパート・複数物件をお持ちのオーナー様に多い相談が「大雪で屋根や雨樋が破損したのだが、火災保険で補償されるのか」というご質問です。この記事では、雪害が補償される条件、補償されないケース、実際の申請手順を、オーナー視点で分かりやすく解説します。複数の物件が同じ保険会社でない場合や、補償内容の確認漏れについてもお答えしています。
- 雪害(積雪の重み・落雪・雪崩による建物破損)は、火災保険の「風災・雹災・雪災」補償の対象になるケースがほとんどです。ただし経年劣化が主因と判定された場合や、雪解け水による浸水は対象外となるため、契約内容の確認が欠かせません。
- 火災保険で雪害が補償されるかどうかは「付帯補償の有無」「免責額との比較」「損害発生からの経過年数(3年時効)」の3点で決まります。複数物件をお持ちのオーナー様は物件ごとに契約条件が異なる場合があり、一括での確認が重要です。
- まず保険証券で風災・雹災・雪災補償の付帯を確認し、被害発生直後に写真を撮影して保険会社に連絡することが、スムーズな保険金受け取りへの最初のステップです。

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格
- 損害保険募集人資格
- 生命保険募集人資格
- 損害保険大学課程資格
- FP2級
保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%
アパートオーナーが押さえるべき「雪害」の定義
賃貸アパートで発生する「雪害」には、大きく分けて3つの種類があります。補償を受けられるかどうかは、この分類を正しく理解することが出発点となります。
弊社の火災保険と雪害の解説記事では、火災保険上の雪害を以下の3類型に整理しています。また、自然災害の保険に入らないリスクでも、雪害を含む自然災害への備えの重要性を詳しく解説しています。
雪害の3つのカテゴリ(積雪の重み・落雪・雪崩)
積雪による荷重
屋根や雨樋に雪が積もり、その重さで建物が破損・変形するケースです。木造アパートや築年数の古い物件で発生しやすく、関西圏でも2021年1月の寒波(大阪市内で観測史上最大級の積雪を記録)や2023年の寒波時に、多くの賃貸物件で被害が報告されました(気象庁 過去の気象データより)。アパートオーナー様からの相談でも、屋根や雨樋の変形が最も多い事例です。
落雪
屋根から滑り落ちる雪が、窓ガラス・フェンス・外壁などを直撃するケースです。隣接する建物や入居者・通行人への二次被害につながる場合もあるため、後述する賠償責任保険との関係も重要になります。
雪崩
山間部の物件や傾斜地に立地するアパートでは、自然発生した雪崩による建物損壊が補償対象になるケースもあります。ただし都市部の賃貸物件では発生頻度は低く、屋根からの大量落雪と混同されることがあります。
「経年劣化の雪による倒壊」は補償対象外(よくある誤解)
雪が降ったことが直接の原因であっても、「経年劣化で既に建物が弱っていた状態に雪の重みが加わった」と損害鑑定人に判断された場合は、補償の対象外となるケースがあります。これは複数物件を所有するオーナー様が最も見落としやすいポイントのひとつです。
弊社の屋根の雪害保険対応記事では、補償対象外となりやすいケースとして「雪融け水のみの漏入」「凍結による破損」「除雪作業が原因の損害」「経年劣化・自然消耗」を明記しています。
特に築20年以上の木造アパートでは、屋根材や下地の劣化が進んでいることが多く、「雪が原因か、経年劣化が原因か」の判定が分かれやすくなります。定期的なメンテナンス記録があると「雪が主因」と判定されやすい傾向があります。また、弊社の後から気づいた雪害の保険申請ガイドでは、後日発見した雪害でも申請可能なケースや、経年劣化扱いにならないための証拠の集め方も解説しています。
賃貸アパート・複数物件オーナーが気をつけるべき保険の確認ポイント
雪害が発生したとき、「うちの火災保険で補償されるのだろうか」という疑問を持つオーナー様は少なくありません。まず保険証券の3点を確認することが、損をしない第一歩です。
風災・雹災・雪災補償が「付帯」されているか確認する
弊社の火災保険の選び方ガイドでは、火災保険の補償内容を「①火災・落雷・爆発 ②風災・雹災・雪災 ③水災 ④盗難 ⑤水濡れ ⑥破損・汚損」の6類型に整理しています。弊社の経験上、実際の保険金請求で最も多いのが「②風災・雹災・雪災」による請求です。
保険証券のチェック方法は以下の通りです。
- 補償内容の一覧ページで「風災・雹災・雪災」の記載を探す
- 補償欄に「○」「あり」「付帯」「基本補償」などの表記があるか確認する
- 「特約」「オプション」欄にのみ記載されている場合は外付けの可能性がある
- 「対象外」「–」「なし」とある場合は雪害補償がない
「基本補償に含まれる」か「特約として外付け」かで、保険料と補償範囲が異なります。特約扱いの場合、保険の見直し時に誤って外してしまうケースがあるため注意が必要です。ご事情によって最適な補償範囲は異なりますので、不明な点は保険会社または担当代理店にご確認ください。
複数物件の保険会社がバラバラなときの一括確認方法
複数物件をお持ちのオーナー様に多い状況として、「物件を取得するたびに別の保険会社で契約した結果、保険会社がバラバラになっている」ケースがあります。更新案内が異なる時期に届くため、補償内容の確認が後回しになりがちです。
弊社では複数物件の一括見直しをご依頼いただく際に、まず以下の3ステップをご提案しています(火災保険値上げ対策記事でも詳述)。
- 保険証券を物件ごとに集め、補償内容を一覧表に整理する
- 複数社から相見積もりを取得し、補償内容と保険料を比較する
- 孤独死保険・施設賠償責任保険を同時に確認し、漏れのない補償体制を整える
複数物件をまとめて一社で管理することで、担当者の継続対応・更新管理の一元化・補償内容の統一が期待できます。
免責額(自己負担額)が補償判定に影響する
補償が付帯されていても、実際の損害額が「免責額(自己負担額)」を下回る場合、保険金は支払われません。
弊社の屋根雪害対応記事では、古い契約に「損害が一定金額以上でないと支払われないフランチャイズ方式(20万円条件)」が適用されているケースがあると明記しています。たとえば雨樋が折れて修繕費が15万円かかった場合でも、免責額20万円の契約では補償を受けられません。保険証券の「免責金額」欄を必ず確認してください。
火災保険の雪害補償で「支払われるケース」(具体例)
実際にどのような被害が補償対象になるのか、弊社が解説している事例をもとに具体的にご説明します。弊社では、火災保険取扱件数2,000件超の経験から、雪害による建物損害の補償事例を以下の5つに整理しています。
屋根の破損・変形(積雪の重みによる圧潰)
積雪の重みでアパートの屋根が下がったり、屋根材(スレート・瓦・金属板等)が割れたりするケースは、「風災・雹災・雪災」補償の中心的な対象です。
補償額の算定は「修繕費(工事見積額)」と「建物の時価(築年数を考慮した現在価値)」のいずれか低い方が目安となります。保険金の受け取り後に修繕業者へ依頼するのが通常の流れです。
弊社の経験上、被害直後は「安全確保を最優先」とし、屋根への無理な登攀は避けてください。地上から望遠で屋根の変形・破損状況を撮影しておくことが、後の保険金申請をスムーズにする重要な準備になります。
雨樋・軒樋の破損・変形
雪が溶けて流れ落ちるときの重みや衝撃で雨樋が割れたり、大きく変形したりするケースも補償対象です。アパートの場合は複数戸にまたがる共用の軒樋が一度に被害を受けることも多く、「1戸分のみの雨樋」であっても「棟全体の雨樋」であっても、補償対象になります。
詳細は弊社の屋根の雪害保険対応記事をご参照ください。
落雪による隣戸・隣地への被害(賠償責任保険が別途必要)
「自分の物件の屋根から落ちた雪が、隣の建物を壊した」というケースは、火災保険(風災・雹災・雪災補償)の対象ではなく、「賠償責任保険」の領域になります。
弊社の施設賠償責任保険の解説記事では、民法717条(土地の工作物の設置または保存に瑕疵がある場合、大家は損害賠償責任を負う)を根拠として、アパートオーナー様が賠償責任を問われるケースを詳述しています。賠償金は「100万円以上になることも珍しくない」とされており、施設賠償責任保険への加入が重要です。保険料は月額1,000〜5,000円程度が参考水準で、複数物件まとめでの割引適用ができる場合もあります(個人オーナーは不動産所得の必要経費として計上可能)。
大雪による雨漏り(二次的な損害)
積雪が原因で屋根に亀裂が生じ、その後の降雨で雨漏りが発生した場合は、防水工事等の修繕費が補償対象になる可能性があります。
ただし「経年劣化で既に防水層が劣化していた」と鑑定人に判定されると対象外になるケースがあります。雪による損傷と経年劣化の判定が難しい箇所のひとつです。
カーポート・外部設備の破損
アパート敷地内の駐車場カーポートが雪の重みで倒壊したケースも、補償の対象になりうる場合があります。ただし、カーポートが火災保険上「建物」として登録されているかを確認する必要があります。「建物のみ補償」の契約で、カーポートが建物付属設備として登録されていない場合は対象外となるため、契約内容の確認が欠かせません。
火災保険で「補償されないケース」と注意点
弊社の火災保険取扱件数2,000件超の経験をもとに、オーナー様が「補償されないケース」で損をしないよう、注意点を正直にお伝えします。
経年劣化が主原因と判定された場合
損害鑑定人は現場調査の際に、「雪が主原因か、経年劣化が主原因か」を判定します。具体的には以下の点を確認することが多いとされています(日本損害保険協会の保険金支払い基準を参考)。
- 屋根材の劣化度(ひびの状態・塗装の剥がれ等)
- 下地材・野地板の腐食・腐敗の状態
- 過去のメンテナンス記録の有無
定期的に屋根の点検・修繕を行い、記録を残しておくことが、「雪が原因」と判定されやすくなる備えになります。
雪解け水による浸水・洪水(水災補償が別途必要)
積雪そのものによる損害は「風災・雹災・雪災補償」で対応できますが、雪解け水が土地に溜まって建物の床下や基礎部分に流入した場合は「水災」扱いとなり、別途「水災補償」が必要です。
地域によっては水災補償を外してコストを抑えている契約もあります。低地にある物件や川沿いの物件では、水災補償の付帯も合わせてご確認ください。ご事情によって最適な補償範囲は異なりますので、個別にご相談いただけますと幸いです。
被害発生から3年以上経過している(保険請求の時効)
弊社の後から気づいた雪害の保険申請ガイドにも記載の通り、火災保険の請求期限は「事故発生(被害発生)から3年(保険法第95条)」です。
「いつか修繕しよう」と先送りにしていると、知らないうちに請求期限を過ぎてしまうケースがあります。複数物件をお持ちのオーナー様は管理が煩雑になりやすく、特に注意が必要です。申請が通らない典型パターンとして弊社では「事故日が不明」「被害の原因が説明できない」というケースを多く見受けます。被害を発見したら早めに保険会社に連絡することをお勧めします。
免責額以下の損害
前述の通り、被害の修繕費が免責額を下回る場合は補償が受けられません。小さな雨樋の損傷が複数箇所あっても、それぞれが免責額以下であれば個別には補償対象外となります。ただし同一の雪害で複数の損害が発生した場合、合算して申請できるかどうかは保険会社・約款の内容によって異なります。
補償対象が「建物のみ」の場合の設備被害
建物内に設置されたエアコンの室外機や給水タンク等が雪で破損した場合、「建物のみ」補償の契約では対象外となるケースがあります。「建物+付属設備」の補償内容になっているかを保険証券で確認してください。
実務:雪害が発生したときの保険金申請ステップ
雪害発生後にやるべきことを6つのステップに整理しました。弊社では「写真撮影から保険金受け取りまで1〜2ヶ月程度かかるケースが多い」とお伝えしています。
STEP1:被害発生直後(被害確認・写真撮影)
被害を確認したら、まず安全を確保したうえで写真撮影を行います。弊社では「全景・損傷部位・周辺状況」の3種類の写真を撮ることをお伝えしています。屋根への登攀は転倒・落下の危険があるため、地上から望遠撮影するか専門業者に依頼してください。
複数物件で同時に被害が発生した場合は、損害が大きい順・入居者への影響が大きい順に優先度をつけて確認するとスムーズです。スマートフォンのカメラで日付を記録しながら撮影し、削除しないよう保管してください。
STEP2:保険会社への連絡(事前通知)
写真撮影の後、できるだけ早く保険会社(または担当代理店)に被害の概要を連絡します。保険証券に記載の連絡先(専用窓口電話番号)に電話するのが一般的です。
複数物件で異なる保険会社に加入している場合は、それぞれに別々に連絡が必要です。この手間が複数物件管理の負担になるという声は弊社にもよく届きますが、連絡の段階で「一括して対応できる担当者はいるか」を確認してみることをお勧めします。
STEP3:損害鑑定人による現場調査の手配
保険会社からの指示に従い、損害鑑定人(または保険会社が手配する調査員)の現場調査を受けます。調査が完了するまで、
被害箇所の修繕は原則として行わないでください。修繕後では損害の状態を確認できず、補償が受けられなくなる可能性があります。
また、弊社では「保険金確定前に工事契約をしないこと」を強くお伝えしています。悪質な訪問業者が雪害の直後に「保険で直せます」と勧誘に来るケースがありますが、保険金が確定するまでは契約しないことが重要です。信頼できる業者の特徴として「地域での施工実績」「保険修理対応の経験」「詳細な書面見積もりの提出」の3点を弊社は基準としてお伝えしています。
STEP4:請求書類の準備・記入
保険会社から届く書類を準備します。一般的に必要な書類は以下の通りです。
- 保険会社所定の保険金請求書
- 被害内容説明書(被害状況を文書で記述)
- 修繕工事の見積書(修理業者作成)
- 被害箇所の写真(STEP1で撮影したもの)
- 建物の図面・登記情報(保険会社から求められる場合)
- 保険証券(番号・契約内容の確認のため)
複数物件で申請する場合、物件ごとに書類セットを別々に用意する必要があります。
STEP5:保険金の審査・支払い
損害鑑定人の報告書をもとに、保険会社が支払いの可否と金額を決定します。弊社の経験では審査から支払いまで2週間〜1ヶ月程度かかるケースが多く、書類に不備がある場合はさらに時間がかかることがあります。
書類を受け取った段階で不備がないか確認し、不明点は早めに保険会社に問い合わせることで、審査期間を短縮できる場合があります。
STEP6:保険金の受け取り・修繕開始
審査が通ると、指定口座に保険金が振り込まれます。振込後、修繕業者に依頼して工事を進めます。なお、修繕費の一部のみが承認された場合、残額については追加請求できるかどうかを保険会社に確認してください。契約内容や損害内容によって対応が異なります。
複数物件オーナーの「まとめて見直し」のススメ
雪害の対応を機に、複数物件の保険内容をまとめて見直すことで、補償の漏れ防止と保険料の最適化を同時に進めることができます。
火災保険料値上げのタイミングで見直すメリット
弊社の火災保険2026年値上げ対策記事では、以下の値上げ状況を解説しています。
- 2024年10月:参考純率の改定により全国平均約13%の保険料引き上げ
- 2026年10月:さらなる改定が決定
- 木造(H構造)アパートが最大の値上げ幅を受けるカテゴリ
複数物件をお持ちの場合、保険料合計が数十万円規模になることもあります。値上げのタイミングは補償内容の見直しと保険料の最適化を同時に行う絶好の機会です。弊社では複数物件の一括見直し相談のご依頼が増えています。
複数物件を1社にまとめるメリット
弊社では「1社専属ではないため、複数社を横断比較・ご提案することができます」(孤独死保険の比較記事より)というスタンスで、複数物件をお持ちのオーナー様の一括見直しをサポートしています。
まとめ見直しの主なメリットは以下の通りです。
- 担当者が一元化され、更新案内や問い合わせの窓口が統一される
- 補償内容を物件ごとに統一でき、見落としが発生しにくくなる
- 複数物件まとめでの割引適用が受けられる場合がある
- 施設賠償責任保険は複数物件での割引適用が可能なケースもある(節税効果として個人オーナーは不動産所得の必要経費に計上できます)
保険会社を統一することで毎月の保険料が変わる場合があります。ご事情によって最適なプランは異なりますので、複数社の相見積もりを取って比較することをお勧めします。
オーナー専用の特約・補償を活用する
雪害対策の見直しに合わせて、アパートオーナー様ならではの特約・補償も同時に確認することを弊社ではお勧めしています。
火災保険の家主費用特約
自殺・犯罪死・孤独死などが発生した際の損害を補償する特約で、補償上限は約100万円が目安とされています。既存の火災保険に追加するだけで管理がシンプルになるメリットがあります。
孤独死専用保険(少額短期保険)
補償上限100〜300万円、家賃補償が最大6ヶ月分まで対応するものもあります。弊社の取扱実績では月額280円〜750円/戸が参考水準です。詳しくはアパートオーナーの孤独死保険比較記事をご参照ください。
施設賠償責任保険
前述の通り、落雪による第三者への損害は火災保険ではカバーされません。月額1,000〜5,000円程度(参考水準)で大きな賠償リスクに備えられる施設賠償責任保険を、弊社の施設賠償責任保険のご案内でも詳しく解説しています。
まとめ
雪害は火災保険(風災・雹災・雪災補償)の対象になるケースが多いですが、「補償が付帯されているか」「免責額はいくらか」「損害発生から3年以内か」「経年劣化でないか」という4つの確認ポイントで、補償の可否が大きく変わります。
特に複数物件をお持ちのオーナー様は、物件ごとに補償内容がバラバラになっているケースが少なくありません。2024年・2026年と相次ぐ火災保険料の値上げを踏まえると、現状を整理して最適な補償体制を組み立てる機会がきています。
弊社(TTマネジメント)では、損害保険大学課程資格を保有し業界歴12年・火災保険取扱件数2,000件超のコンサルタントが、複数物件の一括見直しから雪害申請のサポートまで、特定の保険会社に偏らない中立的な立場でご提案いたします。
複数物件の保険内容が整理できていない、または雪害時の保険申請に不安がある場合は、まずはお気軽にご相談ください。押し売りはいたしませんので、現状の確認・整理からご一緒に進めることができます。

