火災保険の更新時期が近づくと、「地震保険も一緒に入るべきなのか」というご相談を多くいただきます。結論からお伝えすると、賃貸経営における地震保険の要否は、物件の立地・建物の耐震性・手元資金の状況などを踏まえて総合的に判断するもので、すべてのオーナー様に一律で「必須」とは言い切れません。この記事では、火災保険を中心に2,000件以上のご相談に対応してきた実務経験をもとに、地震保険の補償範囲・メリット・デメリット・保険料の考え方を整理し、複数物件をお持ちのオーナー様が直面しやすい「保険会社がバラバラで管理が煩雑」というお悩みへの向き合い方もあわせてご紹介します。
- 賃貸経営の地震保険は「必須」ではなく、立地・耐震性・手元資金から判断するもの。地震リスクが高い地域のオーナー様には加入メリットが大きくなります。
- 地震被害時の修繕費を確保できる一方、火災保険とのセット加入が条件で、保険金だけでは全額の再建築は難しいという制約もあります。
- 複数物件をお持ちの場合は、この機会に保険会社の一括見直しをご検討いただくと、保険料や管理負担の最適化につながります。

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格
- 損害保険募集人資格
- 生命保険募集人資格
- 損害保険大学課程資格
- FP2級
保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%
賃貸経営での地震保険、本当に必要?複数物件オーナーの判断基準
この見出しでは、賃貸経営において地震保険への加入をどう判断すればよいか、その基準を整理します。
火災保険は、火災・風災・水災・落雷などの損害を補償する一方で、地震・噴火・津波を原因とする損害は補償の対象外です。実際、自然災害への備え方を解説した記事でも触れているとおり、地震による建物の全壊では1,000〜3,000万円程度、部分的な損壊でも200〜500万円程度の負担が生じるケースがあり、仮住まい費用として月数万〜十数万円がかかることもあります。地震リスクに備えるには、火災保険とは別に地震保険への加入が欠かせません。
とはいえ、「必ず加入すべき」と一律にお伝えするのは実情に合いません。加入判断は、次の3つの観点から検討することをおすすめしています。
- 立地のリスク: 南海トラフ地震の想定域や活断層の近くに物件をお持ちの場合、加入のメリットは相対的に大きくなります。
- 建物の耐震性: 1981年以降の新耐震基準に対応した建物であれば、被害が比較的限定的で済む可能性があり、判断の幅が広がります。
- 手元資金と負債状況: ローン返済中で修繕費に充てられる手元資金が限られている場合、地震保険でリスクを分散させる価値が高まります。
この3つの軸を照らし合わせたうえで「自分の物件にとって地震保険がどれだけの安心を買えるか」を考えることが、後悔しない判断につながります。実際、複数物件をお持ちのお客様からは「物件ごとに構造も築年数も違うので、それぞれどう考えればいいか分からない」というご相談を多くいただきます。物件ごとに個別に判断するとともに、保有物件全体でリスクをどう配分するかという視点も持っていただくと、より納得感のある結論にたどり着きやすくなります。
地震保険の補償範囲と補償内容を理解する
ここでは、地震保険がどこまでを補償するのか、その範囲を具体的に整理します。
地震保険で補償される損害は、大きく分けて次の3つです。
- 地震による建物の損壊(倒壊・全損・大半損など)
- 地震を原因とする火災(地震に起因する二次的な火災)
- 地震・噴火に起因する津波被害
個人向け火災保険の選び方をまとめた記事でも解説しているとおり、火災保険は火災・風災・水災・雪災・落雷・盗難などを幅広くカバーしますが、地震・津波・噴火による損害はカバー対象外です。この線引きを理解しておくことが、地震保険の必要性を判断する第一歩になります。
なお、賃貸物件の場合、地震保険が補償するのはあくまで建物本体です。入居者の家財は補償の対象に含まれないため、入居者ご自身に家財保険への加入を案内しておくことも、オーナー様側のリスク管理として意識しておきたいポイントです。
地震保険の補償金額は、法律に基づき火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で設定する制度になっています(損害保険料率算出機構の地震保険制度解説より)。たとえば評価額5,000万円の建物で火災保険3,000万円を契約している場合、地震保険は900万円〜1,500万円の範囲で設定するイメージです。損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)によって支払い率が異なるため、「地震保険に入っていれば全額補償される」というものではない点は、後述するデメリットともあわせてご理解いただきたいところです。
賃貸経営で地震保険に加入するメリット
このセクションでは、賃貸経営において地震保険に加入することで得られる具体的なメリットを整理します。
第一に、地震被害時の修繕費をあらかじめ確保できるという安心感があります。地震による建物損壊は火災保険ではカバーできないため、被害が出た際に手元資金がなければ、修繕費を借入で賄わざるを得なくなるケースもあります。特に複数物件を経営されている場合、1物件の被害が経営全体のキャッシュフローに波及するリスクもあるため、地震保険で修繕費の一部を確保できることは、経営の継続性を守るうえで意味があります。
第二に、保険料は経費として計上できる点も見逃せません。賃貸経営にかかる火災保険・地震保険の保険料は、原則として不動産所得の必要経費に算入できるとされています(国税庁の不動産所得における必要経費の取り扱いより)。個人事業主・法人を問わず、税務上のメリットとして意識しておく価値があります。ただし、経費計上の可否や範囲は個々の事業形態や状況によって異なりますので、詳細は顧問税理士にご確認いただくことをおすすめします。
第三に、複数物件をお持ちの場合、この機会にまとめて見直すことで、保険料の最適化につながる可能性があります。アパート火災保険の見直しタイミングと特約選びをまとめた記事でも触れているとおり、火災保険料率は2026年10月に10〜15%程度引き上げられる見込みが示されており、値上げ前のこのタイミングで複数物件をまとめて点検しておくことは、保険料面でも管理面でも意味のある行動といえます。物件ごとに契約がバラバラになっていると、割引制度の活用漏れや保険料の比較不足が生じやすいため、まとめて見直すことで、無駄な支払いに気づけるケースも少なくありません。
地震保険のデメリット・注意点
ここでは、地震保険を検討するうえで押さえておきたいデメリットや制約について、公平な視点でお伝えします。
まず大前提として、地震保険は単独で加入することができません。必ず火災保険とセットでの加入が条件となっており、火災保険のみ・地震保険のみという契約方法は制度上認められていません。火災保険選びのポイントを整理した記事でも同様に説明していますが、地震保険を検討するタイミングは、火災保険全体の内容を見直すタイミングでもあると捉えていただくのがよいでしょう。
次に、地震保険の保険金だけで建物を完全に再建築することは難しいという前提を理解しておく必要があります。前述のとおり補償金額は火災保険の30〜50%の範囲内という上限があり、建物が全損した場合でも、再建築に必要な全額をカバーできるとは限りません。地震保険は「修繕費や再建の一部を支える」という位置づけであり、これのみで完全な原状回復を目指す制度ではない点は、加入前に押さえておきたいポイントです。
また、地震保険を検討する際には、あわせて火災保険本体の補償内容・補償額も確認しておくことが大切です。補償範囲の重複や、過剰補償・不足補償が生じていないか、この機会にチェックしておくと安心です。
地震保険は「入っていれば安心」という単純なものではありません。補償上限や単独加入不可というルールを理解したうえで、火災保険全体とのバランスで検討することが大切です。
地震保険料の相場と割引制度
このセクションでは、地震保険料のおおまかな考え方と、活用できる割引制度について整理します。
地震保険料は、建物の所在地・構造・築年数によって大きく異なります。一般的には、南海トラフ地震の想定域など地震リスクが相対的に高いとされる地域ほど、保険料も高くなる傾向にあります。具体的な保険料は建物ごとの条件によって変わるため、正確な金額を知りたい場合は、個別に見積もりを取ることをおすすめします。なお、アパート火災保険の見直しタイミングを解説した記事で触れているとおり、2026年10月には火災保険料率全体の引き上げも見込まれているため、地震保険とあわせて早めに見積もりを取っておくメリットは大きいといえます。
地震保険には複数の割引制度があり、条件を満たせば保険料を抑えられます(損害保険料率算出機構の地震保険制度における割引区分より)。
| 割引制度 | 主な条件 | 割引率の目安 |
|---|---|---|
| 耐震等級割引 | 建物の耐震等級に応じて適用 | 最大50% |
| 免震建築物割引 | 免震構造を採用している建物 | 30% |
| 耐震診断割引 | 一定基準を満たす耐震診断済み | 10% |
| 建築年割引 | 1981年(昭和56年)以降の新耐震基準適合建物 | 10% |
これらの割引は重複して適用できるとは限らず、保険会社や契約内容によって組み合わせのルールが異なります。ご自身の物件がどの割引に該当するかは、見積もり段階で確認することをおすすめします。
複数物件をお持ちの場合は、各物件の割引適用状況を一度に把握しておくことも重要です。新しい物件と古い物件で割引率が大きく異なることもあり、物件ごとの保険料負担を横並びで確認することで、全体としての最適化につながります。
複数物件の地震保険を一括見直しする利点
ここでは、複数物件をお持ちのオーナー様に特有の課題である「保険会社がバラバラ」という状況と、その解決策についてお伝えします。
複数の賃貸物件をお持ちのオーナー様の多くが、物件ごとに保険会社が異なるという状況を経験されています。理由はさまざまで、物件取得のタイミングによってローン提供銀行から指定された保険会社で契約したり、当時の不動産仲介会社の紹介で加入したりすることが積み重なった結果です。この状態が続くと、更新時期がバラバラで手続きが煩雑になったり、各物件の保険料が適正かどうか比較できなかったり、割引制度の活用漏れに気づけなかったりといった問題が生じやすくなります。保険代理店の今後と選び方について解説した記事でも触れているとおり、契約している代理店が廃業した場合に誰に相談すればよいか分からなくなるリスクや、物件ごとに担当者が変わり、そのたびに事情を説明し直す負担も、複数物件オーナー様からよく伺うお悩みです。
こうした状況を解消するために、複数物件の地震保険・火災保険をまとめて見直すことには、次のようなメリットがあります。
- 複数物件を横断的に比較したうえで、最適な保険会社・商品を選定できる
- 複数物件まとめての加入で活用できる割引がないか確認できる
- 保険会社を集約することで、更新手続きが一元化される
- 一人の担当者が複数物件の事情を継続的に理解し、サポートできる
- すべての物件のリスク・補償内容を一度に把握できる
複数棟所有時の特約確認について触れたアパートオーナー向け孤独死保険の記事でも指摘されているとおり、地震保険だけでなく特約全般が物件ごとにバラバラになっているケースは少なくありません。この機会に、まとめて棚卸ししておくと安心です。
弊社は三井住友海上・損保ジャパンの2社と提携し、特定の保険会社に偏らない中立的な立場から、複数物件をお持ちのお客様に最適なプランをご提案しています。「この物件にはこちらの保険会社が合っている」という個別事情に応じた選定を、一人の担当者が継続してサポートすることが可能です。物件ごとに担当者が変わる大手代理店の仕組みに不便を感じられているオーナー様には、こうした一元的な相談窓口をご検討いただく価値があると考えています。
複数物件をお持ちの方がまず確認したいポイント
- 各物件の保険会社・更新時期が把握できているか
- 物件ごとの割引適用状況にばらつきがないか
- 担当者が変わるたびに事情を説明し直していないか
保険金請求の流れと注意点
このセクションでは、実際に地震被害が発生した際の請求の流れと、押さえておきたい注意点を整理します。
地震被害が発生したら、まず建物の損壊状況を詳細に写真で記録しておくことが重要です。全体写真・部分写真・複数角度からの撮影があると、査定の際の判断材料になります。破損した設備・家財についても、廃棄する前に写真を残しておくと、後から状況を説明しやすくなります。
保険証券は請求時に必要となる重要な書類です。日頃から分かりやすい場所に保管しておくことをおすすめします。万一紛失した場合でも、保険会社に連絡すれば再発行の手続きや、証券がなくても請求を進める方法がありますのでご安心ください。複数物件をお持ちの場合は、すべての保険証券・契約情報を一元管理しておくと、いざというときの初動がスムーズになります。
請求から保険金受け取りまでの期間は、被害の程度や物件数によって前後します。保険法では、保険会社は損害調査に必要な合理的な期間内に保険金を支払う義務を負うとされています(保険法第21条)。弊社では、これまで火災保険を中心に2,000件を超えるご相談・請求対応に携わってきた経験から、査定の進捗をこまめにご報告し、お客様の不安を最小限に抑えることを心がけています。複雑な被害や査定額に疑問がある場合は、代理店を通じてご相談いただくことで、スムーズなやり取りにつながることもあります。
地震以外の自然災害リスクも備える
最後に、地震保険の検討とあわせて意識しておきたい、地震以外の自然災害リスクについて触れておきます。
賃貸経営においては、地震だけでなく、台風・洪水・土砂崩れなど複数の自然災害リスクが存在します。自然災害への備え方を解説した記事でも紹介しているとおり、火災保険は火災・風災・水災・雪災・落雷・盗難といった幅広い災害をカバーしますが、物件ごとに立地条件が異なる以上、必要な補償内容も変わってきます。
各物件について、国土交通省のハザードマップポータルサイトなど公的な情報を確認し、水害リスクや土砂災害リスクの水準を把握しておくことをおすすめします。地震保険だけでなく、火災保険の風災・水災補償が物件の立地リスクに見合っているかどうかも、あわせて点検しておくことが総合的なリスク管理につながります。
複数物件をお持ちの場合は、各物件のリスクプロフィールを整理し、それに応じた補償内容をまとめてご検討いただくことをおすすめします。弊社では、複数物件のリスク分析から保険提案まで、一度にご相談いただくことが可能です。
まとめ
賃貸経営における地震保険の加入判断は、物件の立地・耐震性・手元資金などから総合的に検討することが大切です。地震保険は必ずしも「必須」ではありませんが、地震リスクが相対的に高い地域に物件をお持ちのオーナー様には、加入のメリットが大きくなります。
特に複数物件をお持ちの場合は、この機会に保険全体を一度見直してみることをおすすめします。保険会社がバラバラになっていないか、活用できる割引を見逃していないか、火災保険の内容は現状に合っているか――こうした点を整理することで、保険料の最適化と管理負担の軽減を同時に実現できる可能性があります。
弊社は、不動産オーナー様の複数物件をまとめてご相談いただけるよう、三井住友海上・損保ジャパンの2社と提携し、中立的な立場から複数社の比較・提案を行っています。保険の見直しについてご不明な点やご相談があれば、弊社サイトからお気軽にお問い合わせください。

