失敗しない法人保険活用テクニックと見直し術

失敗しない法人保険活用テクニックと見直し術

法人保険と聞くと、まず「節税テクニック」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

ただ、税制改正が進んだ今、保険料を払えば払うほど得をする時代ではありません。

それでもなお、法人保険は経営者の万が一や退職金、事業承継、従業員の福利厚生など、会社のお金のリスクをコントロールするうえで、とても心強いツールです。

この記事では、法人保険の基本から最新の損金算入ルール、退職金・事業承継・福利厚生での具体的な活用テクニック、失敗しない選び方や見直しのポイントまで、経営者目線で分かりやすく整理してお伝えしていきます。

この記事を3行で解説
  • 法人保険は「節税商品」ではなく、経営リスクをカバーするためのツールとして捉えることが重要です。
  • 最新の損金算入ルールを踏まえつつ、退職金・事業承継・福利厚生など目的別にテクニックを整理しました。
  • 税理士と保険担当者と連携しながら、自社の経営計画に合った設計・見直しを行うための具体的な判断軸を紹介します。
記事の筆者
保険アドバイザー

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格

  • 損害保険募集人資格
  • 生命保険募集人資格
  • 損害保険大学課程資格
  • FP2級

保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%

目次

法人保険のテクニックを学ぶ前に押さえたい基本

これから法人保険の基本と、テクニックに振り回されないための考え方について解説します。

  • 法人保険とは?個人保険との違いをざっくり整理
  • 「節税商品」ではなく経営リスク対策として捉えるべき理由

法人保険とは?個人保険との違いをざっくり整理

法人保険は、簡単に言うと「会社が契約者となり、経営者や従業員の万が一に備える保険」です。

個人の生命保険と違い、事業継続・退職金・福利厚生など会社の目的のために保険金や解約返戻金を活用していきます。

個人保険との大きな違いは、次のようなポイントです。

  • 保険料を会社が負担する
  • 経理上「損金(経費)」にできる部分があり、法人税に影響する
  • 受け取る保険金・解約返戻金が、事業資金や退職金など会社の支出に使われる

ある中小企業では、社長個人の名義で大きな終身保険に入っていましたが、会社に借入金が多く、社長に万が一のことが起きると返済ができず事業継続が危うい状況でした。

そこで法人契約の保険に切り替え、死亡保険金を借入金返済や運転資金に充てられるように設計したことで、万が一の際の会社の不安が大きく減りました。

このように、法人保険は「誰を守るか」よりも「会社として何のために使うか」を意識することが大切です。

まずは、個人の保険とは別物としてイメージを整理しておきましょう。

「節税商品」ではなく経営リスク対策として捉えるべき理由

法人保険を検討するとき、多くの経営者が気にするのが節税効果です。

ただ、現在の税制では「保険料を払えばそのままお得になる」といった単純な節税商品ではなく、実際には税金の繰延べに過ぎないケースがほとんどです。

以前は高い解約返戻率を利用した節税スキームが流行しましたが、税制改正により損金算入できる割合やルールが厳格化されました。

その結果、「税金だけを減らそう」と保険に入ると、将来保険金を受け取るタイミングで思った以上の税負担が発生することもあります。

ある社長は、紹介された節税保険に飛びつき多額の保険料を支払いましたが、数年後に資金が必要になり予定より早く解約。

解約返戻金は払い込んだ保険料を下回り、しかも益金計上で税負担も増え、結果として「節税どころか資金繰り悪化につながった」と悔やんでいました。

こうした失敗を避けるには、「節税」ではなく「経営リスクをどのようにカバーするか」を出発点にすることです。

万が一の際の運転資金、退職金、事業承継、従業員の安心など、会社の目的が先にあり、その手段として法人保険をどう使うかを考えていきましょう。

経営視点で整理する法人保険のメリット・デメリット

これから法人保険のメリット・デメリットと、自社に向いているかどうかの判断軸について解説します。

  • 法人保険でカバーできる主な経営リスク
  • デメリットとよくある勘違い(キャッシュフロー悪化など)
  • どんな会社に法人保険が向いているか

法人保険でカバーできる主な経営リスク

法人保険の一番の役割は、会社が抱えるお金のリスクをカバーすることです。

代表的なものは次の通りです。

  • 経営者に万が一があったときの運転資金・借入金返済
  • 経営者・役員の退職金準備
  • 事業承継・相続時の納税資金準備
  • 従業員の死亡・入院などへの弔慰金・見舞金
  • 備えながら一定の貯蓄性を持たせる資金準備

たとえば、社長に万が一のことがあったとき、銀行からの借入金や従業員の給料を払い続けることができなければ、会社はあっという間に行き詰まります。

そこで、経営者に万が一あった際にまとまった保険金が入るように設計しておくと、その資金で借入金を返済し、事業を続けることができます。

このように、法人保険は「何かあったときに会社が倒れないようにするための安全装置」として機能します。

ここを押さえておくと、テクニックも「何のために使うのか」がブレにくくなります。

デメリットとよくある勘違い(キャッシュフロー悪化など)

一方で、法人保険にはきちんと押さえておきたいデメリットもあります。

  • 保険料の支払いが長期にわたり、キャッシュフローを圧迫しやすい
  • 早期解約すると解約返戻金が払い込み保険料を大きく下回ることがある
  • 税務上の取り扱いが複雑で、解釈を誤ると想定外の課税が発生する可能性がある

「保険料が損金になるなら、多少高くても入った方が得」と考えて高額な保険に入ると、毎月の保険料が重荷になり、肝心の運転資金が圧迫されます。

資金繰りに余裕がないときに保険を解約しようとしても、解約返戻金が少なくてダメージだけが残る、というパターンは珍しくありません。

法人保険は、うまく活用すれば頼もしいツールですが、「とりあえず節税になるなら入っておこう」という発想で契約すると、自分で自分の首を締める結果になりがちです。

デメリットやリスクも含めて冷静に見ておくことが大切です。

どんな会社に法人保険が向いているか

法人保険が特に向いているのは、次のような会社です。

  • 経営者に万が一があったとき、代わりの人材や資金手当てが難しい中小企業
  • 役員退職金をある程度の金額で用意したい会社
  • 自社株の評価が高く、将来の事業承継や相続税が気になっている会社
  • 従業員の採用・定着に力を入れていきたい会社

逆に、売上と利益が不安定で毎年の資金繰りに余裕がない会社は、まずは本業の安定が優先です。

保険料を払う余力がないのに無理をしても、経営の重荷になってしまいます。

法人保険は「規模が大きい会社だけのもの」ではありませんが、自社のステージや財務状況を踏まえて、必要性の高い会社から優先して検討していくのが現実的です。

税制と損金算入ルールを踏まえた節税テクニック

これから法人保険の損金算入ルールと、税金の繰延べとしての節税テクニック、そしてやってはいけないスキームについて解説します。

  • 法人保険の損金算入ルールの基本
  • 税金の繰延べとしての「節税テクニック」をどう使うか
  • 税制改正後に注意したいNGスキーム

法人保険の損金算入ルールの基本

法人保険の大きな特徴のひとつが、「保険料の一部を損金算入できる」点です。

ただし、どこまで損金にできるかは、保険の種類や解約返戻率などにより細かくルールが決められています。

ポイントは次の通りです。

  • 全額損金にできるもの:定期保険など、一部の保障性の高い商品
  • 一部損金・一部資産計上:返戻率が一定以上の養老保険など
  • 資産計上が中心:高い返戻率の商品や貯蓄性の高い商品

税制改正以降は、いわゆる「節税保険」への規制が強まり、解約返戻率の高さに応じて損金算入できる割合が制限されています。

ここで大切なのは、「税務の取り扱いは商品ごとに変わる」という現実です。

同じ法人保険という名前でも、損金にできる割合や仕訳の方法が異なるため、必ず最新の税制と商品仕様を確認し、疑問があれば税理士に相談することが欠かせません。

税金の繰延べとしての「節税テクニック」をどう使うか

法人保険を使った節税テクニックは、「税金をゼロにする」のではなく、「支払うタイミングを後ろにずらす」イメージに近いです。

  • 保険料支払い時:損金算入できる部分については、当期の利益が圧縮され法人税が軽くなる
  • 保険金・解約返戻金受取時:受け取ったお金は益金となり、将来の利益として課税対象になる

つまり、今期の税負担を抑える代わりに、将来保険金を受け取るタイミングで税金を払うことになります。

この仕組みをうまく使うと、利益が大きく出ている年に保険料を多めに支払い、将来売上が落ちる可能性のある時期に保険金を受け取る、といった調整が可能です。

業績が好調な製造業の会社では、数年連続で利益が増え、法人税の負担が重くなっていました。

そこで、一定期間だけ保険料を多めに支払う法人保険を活用し、好調な時期の税負担をやわらげながら、将来の退職金や設備投資の原資として解約返戻金を受け取る設計にしたところ、事業計画に沿ったキャッシュフローコントロールがしやすくなった、というケースもあります。

ただし、将来の解約時や保険金受取時の税負担も同時にイメージしておかないと、「解約したら逆に大きな税金が発生した」ということになりかねません。

テクニックを使うときほど、出口の税務まで一緒に確認しておくことが重要です。

税制改正後に注意したいNGスキーム

一時期、法人保険を使った極端な節税スキームが広まりましたが、現在は税制改正で多くが封じられています。

注意したいポイントは次の通りです。

  • 高い解約返戻率を利用して、短期間で解約する前提のスキーム
  • 実態として保障が薄いのに、節税だけを目的にした大口契約
  • 税務上グレーな取り扱いを前提とした提案

こうしたスキームは、後から税務当局の見解が変わると、過去にさかのぼって否認されるリスクがあります。

その場合、追徴課税や加算税などで、当初想定した節税効果を大きく上回る負担になることもあります。

経営者としては、目先の節税メリットだけでなく、「数年後に振り返っても納得できるか」という視点で判断することが大切です。

派手なテクニックほど、落とし穴がないかを冷静に確認しましょう。

退職金・役員報酬を見据えた資金準備テクニック

これから経営者・役員の退職金を法人保険で準備する方法と、解約返戻金のピークタイミング、無理のない保険料の決め方について解説します。

  • 経営者・役員退職金を法人保険で準備する設計の考え方
  • 解約返戻金ピークと退任タイミングを合わせるテクニック
  • 資金繰りを悪化させない保険料水準の決め方

経営者・役員退職金を法人保険で準備する設計の考え方

中小企業では、経営者・役員の退職金が将来の大きな支出になります。

この退職金の原資として、法人保険の解約返戻金を活用する方法があります。

考え方の流れは次のようなものです。

  1. 退職時にいくらくらいの退職金を用意したいか決める
  2. その金額をいつまでに、どのくらい積み立てる必要があるか逆算する
  3. 解約返戻金のピーク時期が退任予定に近い商品を選ぶ
  4. 無理のない保険料水準を設定する

実際の現場では、「社長が65歳で退任する予定なので、その時点で解約返戻金が一定額たまるように養老保険を組む」といった設計がよく使われます。

この方法は、退職金の準備を計画的にできる一方で、保険料の負担が長期にわたるため、自社の利益水準やキャッシュフローを冷静に見ながら設計することが欠かせません。

解約返戻金ピークと退任タイミングを合わせるテクニック

退職金準備に法人保険を使うときのポイントは、「解約返戻金のピーク時期」と「退任タイミング」を合わせることです。

多くの貯蓄性のある法人保険では、保険期間の途中で解約返戻金がピークを迎え、その後は徐々に返戻率が下がる設計になっています。

そのため、ピーク前に解約すると返戻金が少なくなり、ピークを過ぎてから解約しても効率が悪くなります。

ある会社では、社長の退任年齢を70歳と決め、その年齢に合わせて解約返戻金がピークになるように保険期間と払込期間を設定しました。

結果として、退職金に必要な金額をほぼ計画通りに準備でき、退任時の資金不安を抑えることができました。

退職時期が大きく変わる可能性がある場合は、柔軟に設計を見直せるようにしておくことも大切です。

法人保険は長期の契約になることが多いため、「出口のタイミング」を意識した設計がテクニックとして重要になります。

資金繰りを悪化させない保険料水準の決め方

退職金準備の目的が明確でも、保険料の設定を誤ると本業の資金繰りを圧迫します。

意識したいポイントは次の通りです。

  • 毎年の利益水準の何割までを保険料に充てるかあらかじめ決める
  • 売上が落ち込んだ年でも支払い続けられる水準に抑える
  • 他の借入返済や投資計画も含めて、総合的に資金繰りをシミュレーションする

ある経営者は、退職金を急いで積み立てようとして保険料を高く設定しすぎ、数年後の売上減少時に支払いが負担となり、結局解約せざるを得なくなりました。

返戻金は計画より少なく、退職金準備もやり直しになってしまいました。

退職金準備のテクニックは、「無理なく続けられること」が前提です。

シミュレーションの段階で、悲観的なケースも含めて検討しておくと、後悔の少ない設計に近づきます。

事業承継・相続対策で法人保険を活用するテクニック

これから事業承継・相続の場面で法人保険をどう使うか、具体的なテクニックについて解説します。

  • 事業承継で発生するお金の問題と法人保険の役割
  • 自社株対策・納税資金準備としての活用テクニック
  • 経営者貸付金リスクへの備え方

事業承継で発生するお金の問題と法人保険の役割

事業承継の場面では、「誰が会社を引き継ぐか」だけでなく、「お金をどうするか」という問題がつきまといます。

特に、自社株の評価が高い会社ほど、相続税や贈与税の負担が重くなりがちです。

法人保険は、次のような場面で役立ちます。

  • 経営者に万が一があったときの遺族への資金手当て
  • 後継者が納税するための資金の準備
  • 自社株を買い取るための資金の準備

たとえば、後継者が自社株を相続したものの、納税資金が足りずに株式を手放さざるを得ないと、会社の支配権が外部に渡ってしまうリスクがあります。

こうした事態を防ぐ目的で、法人保険を活用して納税資金をあらかじめ用意しておくことができます。

自社株対策・納税資金準備としての活用テクニック

自社株対策として法人保険を使うときは、「どのタイミングで、どのくらいの資金が必要になるか」を具体的にイメージすることがポイントです。

  • 自社株評価額と、想定される相続税・贈与税の目安を把握する
  • 必要となる納税資金を、保険金や解約返戻金でどこまでカバーするか決める
  • 後継者や家族と話し合い、資金の使い道について共通認識を持つ

あるオーナー企業では、自社株評価が年々上がり、「このままでは事業承継のときに後継者が納税できないかもしれない」と不安が高まっていました。

そこで、経営者を被保険者とした法人保険に加入し、将来の保険金・解約返戻金を納税資金として活用できるように設計したことで、事業承継の見通しを立てやすくなりました。

自社株対策に法人保険を使うときは、保険だけに頼るのではなく、株式の分散や持株会社の活用など、他の対策と組み合わせることも検討するとバランスが取れます。

経営者貸付金リスクへの備え方

中小企業では、経営者が個人資金を会社に貸し付けていることが少なくありません。

この「経営者貸付金」は、経営者が亡くなると相続財産となり、相続人から会社に返済を求められる可能性があります。

返済を求められたときに資金がないと、会社の資金繰りが一気に悪化します。

このリスクに備える方法のひとつとして、法人保険を活用し、死亡保険金や解約返戻金で返済資金を準備しておくやり方があります。

経営者貸付金の金額と返済の優先度を整理し、どの程度を保険でカバーするか決めておくと、万が一の際にも会社と家族の両方を守りやすくなります。

事業承継・相続対策のテクニックとして、税理士と相談しながら設計していきましょう。

福利厚生・採用力アップにつながる法人保険テクニック

これから法人保険を「福利厚生」として活用し、従業員の定着や採用力アップにつなげるテクニックについて解説します。

  • 従業員向け保障で離職率を下げるテクニック
  • 福利厚生型の法人保険を選ぶときのポイント
  • 「福利厚生=コスト」から「採用投資」として考える発想転換

従業員向け保障で離職率を下げるテクニック

法人保険は、経営者を守るためだけのものではありません。

従業員向けの死亡保障や医療保障を用意することで、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる要素にもなります。

  • 弔慰金や死亡退職金の原資としての保険
  • 入院・手術時の給付金を支払うための保険
  • 一定の勤続年数ごとにお祝い金・一時金として支給する仕組み

ある介護事業所では、採用競争が激しく、給与だけでは他社と差別化できない状況でした。

そこで、一定の勤続年数ごとに一時金を支給する福利厚生型の法人保険を導入し、「長く働くほど手厚いサポートがある職場」として打ち出したところ、離職率が下がり、採用時の反応も良くなったそうです。

従業員向けの保障は、数字だけでは測れない安心感を生みます。

特に家庭を持つ従業員にとっては、万が一のときに家族も守ってもらえるかどうかは、職場を選ぶうえで大きなポイントになります。

福利厚生型の法人保険を選ぶときのポイント

福利厚生目的で法人保険を選ぶときは、「どんな従業員に、どのくらいの保障を用意したいか」を先に決めておくと選びやすくなります。

  • 全従業員を対象にするのか、正社員だけか
  • 家族も保障対象にするのか
  • 死亡時・入院時・退職時など、どの場面を重視するのか

また、福利厚生型の保険の中には、保険料の一部が損金算入できる商品もあれば、全額が福利厚生費として扱われるケースもあります。

税務上の取り扱いを含めて、税理士と確認しながら選ぶと安心です。

福利厚生は「用意すること」が目的になりがちですが、従業員にきちんと内容を説明し、「会社としてあなたたちを大事にしたい」というメッセージを伝えることで、初めて価値が伝わります。

「福利厚生=コスト」から「採用投資」として考える発想転換

福利厚生に保険料を使うと、どうしても「毎月の固定費が増える」と感じやすいものです。

ただ、採用や育成にかかるコストを考えると、従業員の定着が良くなることは中長期的にはプラスに働きます。

採用広告費や紹介料、教育にかかる時間と人件費をトータルで見てみると、離職が続くことで会社にとって大きな損失となっているケースも多いです。

そこに、法人保険を使った福利厚生というテクニックを組み込むことで、「人が辞めにくい会社」を目指す発想が持てます。

福利厚生にお金をかけるかどうかではなく、「どのくらいの投資で、どれだけの採用・定着効果が見込めるか」という視点で考えると、法人保険を活用する価値が見えてきます。

失敗しない法人保険の選び方・見直し方

これから法人保険を選ぶ・見直すときの比較軸やチェックポイントについて解説します。

  • 代理店任せにしないための比較軸(保障・返戻金・税務)
  • 既契約を見直すときにチェックしたいポイント
  • 加入前に必ず聞いておきたい質問リスト

代理店任せにしないための比較軸(保障・返戻金・税務)

法人保険は商品が多く、つい提案されたものをそのまま受け入れてしまいがちです。

代理店任せにしないためには、次の3つの軸で比較する習慣を持つと安心です。

  • 保障内容:どんなリスクに備えられるか、必要以上の保障になっていないか
  • 解約返戻金:いつ、どのタイミングでどのくらい戻るか
  • 税務上の扱い:保険料の損金算入割合と、保険金・解約返戻金受取時の課税

商品パンフレットだけでは分かりにくい部分も多いため、「この商品と別の商品で、返戻金の推移と税務の違いを比較した表を見せてほしい」と具体的に依頼すると、判断材料がそろいやすくなります。

既契約を見直すときにチェックしたいポイント

すでに法人保険に加入している場合でも、環境が変われば見直しが必要です。

チェックしたいポイントは次の通りです。

  • 当初の目的(退職金・事業承継・節税など)が今も有効か
  • 解約返戻金のカーブとピーク時期が、現在の事業計画と合っているか
  • 保険料がキャッシュフローを圧迫していないか
  • 税制改正の影響で取り扱いが変わっていないか

過去に「節税になる」と聞いて契約した保険が、今の税制ではメリットが薄くなっているケースもあります。

定期的に税理士・保険担当者と一緒に確認し、必要であれば減額・変更・解約なども含めて検討していきましょう。

加入前に必ず聞いておきたい質問リスト

法人保険に新たに加入する前には、次のような質問を担当者に投げかけておくと、後から「聞いておけばよかった」と後悔しにくくなります。

  • この保険の主な目的は何か(死亡保障・退職金・事業承継など)
  • 保険料のうち、どの部分が損金算入の対象になるか
  • 解約返戻金の推移とピーク時期はどうなっているか
  • 早期解約した場合、どのくらいの損失が出るか
  • 税制改正があった場合、影響をどうフォローしてくれるか

こうした質問に丁寧に答えてくれる担当者かどうかも、長く付き合っていけるかどうかの判断材料になります。

税理士・保険担当者と連携して法人保険を使いこなすコツ

これから税理士・保険担当者との役割分担と、実際に契約・見直しを進めるステップについて解説します。

  • 税理士と保険担当者の役割を整理する
  • 打ち合わせ前に経営者が準備すべき情報
  • 実際に契約・見直しを進めるステップ

税理士と保険担当者の役割を整理する

法人保険をうまく使いこなすには、「商品に詳しい人」と「税務に詳しい人」の両方の視点が必要です。

一般的には次のような役割分担になります。

  • 保険担当者:商品内容・保険料・解約返戻金・保障内容の提案
  • 税理士:損金算入や保険金の税務、決算への影響のアドバイス

保険担当者だけの説明で税務を判断するのは危険ですし、税理士が保険商品の細かい仕様まで把握しているとは限りません。

両者の説明を組み合わせて、「自社の経営にとってどうか」を経営者自身が判断する姿勢が重要です。

打ち合わせ前に経営者が準備すべき情報

打ち合わせの質を高めるために、経営者側でも次のような情報を整理しておくと話がスムーズに進みます。

  • 今後3〜5年程度の売上・利益の見通し
  • 経営者・役員の退任予定(ざっくりでも可)
  • 事業承継や相続についての希望(後継者の有無など)
  • 従業員数と、今後の採用・拡大の方針
  • すでに加入している保険契約の一覧

これらをもとに、「何のために法人保険を使いたいのか」を一言でまとめておくと、提案内容も目的に沿ったものになりやすくなります。

実際に契約・見直しを進めるステップ

最後に、法人保険の契約・見直しを進める大まかなステップを整理しておきます。

  1. 現状把握:既契約と経営課題を整理する
  2. 目的設定:退職金・事業承継・福利厚生など、優先順位を決める
  3. 商品比較:複数商品の提案を受け、保障・返戻金・税務で比較する
  4. シミュレーション:将来の解約・保険金受取時の税負担まで確認する
  5. 契約・見直し:必要があれば段階的に見直し、リスクを分散する

こうした手順を踏むことで、「なんとなく良さそうだから契約した」という状態から、「自社の経営計画に合わせて設計した法人保険」に近づけていくことができます。

テクニックはあくまで手段であり、主役はあくまで会社の将来像だという視点を忘れずに進めていきましょう。

法人保険の活用テクニックのまとめ

法人保険は、節税テクニックだけを期待して入ると失敗しやすい商品です。

現在の税制では、保険料の損金算入はあっても、多くの場合は税金の繰延べに過ぎません。

その一方で、経営者の万が一や退職金、事業承継や相続、従業員の福利厚生など、会社が抱えるさまざまなお金のリスクをカバーする手段としては非常に有効です。

本記事では、損金算入ルールや税制改正後の注意点を踏まえながら、退職金準備・事業承継・福利厚生での具体的な活用テクニック、失敗しない選び方・見直し方、税理士と保険担当者との連携のコツまで、経営者目線で法人保険の使い方を整理しました

この記事の重要なポイント
  • 節税よりも「経営リスク対策」として法人保険を位置づける
  • 損金算入は多くが税金の繰延べであり、出口の税務まで確認する
  • 退職金・事業承継・福利厚生など目的ごとに設計を分ける
  • 解約返戻金のピークと退任・事業承継のタイミングを合わせる
  • 税理士と保険担当者の両方と連携し、経営者が最終判断する

法人保険の活用テクニックのよくある質問

法人保険は本当に節税になるのでしょうか?

現在の税制では、法人保険の保険料を損金算入できる場合もありますが、多くは「税金の繰延べ」に過ぎません。保険料支払時に税負担は軽くなりますが、将来保険金や解約返戻金を受け取るときには益金として課税されます。節税効果だけを期待するのではなく、退職金や事業承継などの目的とセットで検討することが大切です。

資金繰りが不安定な会社でも法人保険を活用してよいですか?

資金繰りに余裕がない状態で高額な保険料を支払うのはリスクが高いです。法人保険は長期契約になることが多く、途中で解約すると解約返戻金が払い込み保険料を下回る場合もあります。まずは本業の安定とキャッシュフローの改善を優先し、そのうえで無理のない保険料水準で検討するのが現実的です。

すでに加入している法人保険を見直すタイミングはいつが良いですか?

税制改正があったとき、経営者の退任時期や事業承継の計画が変わったとき、業績や資金繰りの状況が大きく変化したときは、見直しの良いタイミングです。当初の目的と今の経営課題がずれていないか、解約返戻金のピークと事業計画が合っているかなどを税理士と保険担当者と一緒に確認し、必要に応じて減額・変更・解約も含めて検討しましょう。

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