アパートを経営するうえで、火災保険の選択は物件資産を守るための最初のステップです。補償対象・補償範囲・保険金額・保険期間・保険料という5つの判断軸に加え、オーナー特有のニーズに応える施設賠償責任特約・家賃収入特約・家主費用特約という3大特約をどう組み合わせるかが、実務上のポイントになります。本記事では、アパートオーナーの火災保険の選び方を、保険料相場の見方や複数社比較のコツとあわせて解説します。あわせて、複数物件をお持ちのオーナー様に向けて、保険会社や満期日がバラバラになりやすいという悩みを整理する一括見直しの考え方もご紹介します。
- アパートオーナーの火災保険選びは「補償対象・補償範囲・保険金額」の3点を軸に、3大特約の要否を組み合わせて検討するのが基本の考え方です。
- 保険会社によって補償内容や保険料には違いがあるため、1社の提案だけで決めず、複数社を比較したうえで検討することが後悔を防ぐポイントになります。
- ご自身の物件のリスク(立地・築年数・構造)を整理したうえで、複数社に見積もりを依頼し、この記事で紹介する判断軸をもとに検討を進めてみてください。

【保険コンサルタント:長谷川】
保有資格
- 損害保険募集人資格
- 生命保険募集人資格
- 損害保険大学課程資格
- FP2級
保険業界歴12年、火災保険取扱件数2,000件、保険金の請求対応の顧客満足度98%
H2-1: 火災保険に入らないリスク|入居者トラブル・倒壊時の賠償が発生
火災保険に加入していない場合、火災や自然災害による建物損害だけでなく、入居者や第三者への賠償責任、家賃収入の減少まで、すべて自己負担になる可能性があります。アパートオーナーにとって火災保険は、建物という資産を守るだけでなく、入居者トラブルや賠償リスクからオーナー自身を守るための備えでもあります。
入居者トラブル時の賠償リスク(建物倒壊で隣家損壊・死傷発生)
老朽化した外壁の落下や、経年劣化による建物の一部倒壊で隣家や通行人に損害を与えてしまった場合、所有者であるオーナーが賠償責任を問われることがあります。火災保険に付帯する賠償責任特約が無ければ、この賠償費用も全額自己負担になりかねません。
入居者の火災・不注意による損害(損害賠償請求は自己負担)
入居者の不注意による火災であっても、建物本体の修復費用は基本的にオーナーが手当てする必要があります。弊社が公開している自然災害に関する解説記事では、自然災害の保険に入らないリスクとして、全壊家屋の修復費用が1,000万円〜3,000万円、部分損壊でも200万円〜500万円程度になりうる旨を参考情報として紹介しています。金額は物件の規模や被害状況によって大きく異なりますが、備えの重要性を考えるうえでの目安になります。
家賃収入の突然の減少(火災で建物焼失→修復期間は賃料ゼロ)
火災で建物の一部が使用できなくなると、修復期間中は該当住戸からの家賃収入が途絶えます。複数戸を保有するアパート経営では、この減収がキャッシュフローに与える影響も無視できません。
金融機関の融資要件(火災保険加入は融資の前提条件)
物件取得時にアパートローンを利用している場合、多くの金融機関では火災保険への加入が融資条件として求められます。ローンの返済が続く限り、保険の未加入・失効は避けたいポイントです。
火災保険が未加入・不十分なままだと、建物の修復費用・賠償責任・家賃収入の減少という3つのリスクを同時に自己負担で抱えることになりかねません。物件取得のタイミングだけでなく、更新のたびに補償内容を見直すことをおすすめします。
H2-2: アパートオーナーが火災保険を選ぶ5つのポイント
アパートオーナー向けの火災保険を選ぶ際は、①補償対象物、②補償範囲、③保険金額、④保険期間、⑤保険料という5つのポイントを順番に整理していくことで、過不足のないプラン選びに近づきます。アパートオーナーの火災保険選びで最も後悔しやすいのは、保険料の安さだけで選び、必要な補償が抜け落ちてしまうケースです。
①補償対象物を決める(建物のみか、家財も含めるか。共有部分はどこまで)
まず整理したいのが、補償対象を「建物のみ」にするか「家財」も含めるかという点です。アパート経営の場合、オーナーが所有する建物本体・共用部分の設備が中心になりますが、太陽光パネルなど付帯設備を設置している場合は補償対象に含めるかどうかの確認が必要です。付帯設備については太陽光発電設備の保険で個別に解説しています。
②補償範囲を決める(火災だけか、風災・水災・盗難も含めるか)
火災保険という名称ですが、実際には火災だけでなく、風災・雹災・雪災・水災・盗難・破損等、幅広いリスクを補償対象に組み込める商品が一般的です。物件の立地(浸水想定区域・積雪地域かどうか等)に応じて、必要な補償範囲は変わってきます。
③保険金額を決める(再構築価額ベース。過剰・不足補償を避ける)
保険金額は、物件を建て直す場合にかかる費用(再構築価額)を基準に設定するのが一般的な考え方です。時価額を基準にすると、いざという時に十分な補償を受けられない可能性があるため注意が必要です。過剰な保険金額はその分保険料も上がるため、「多ければ安心」というわけでもありません。
④保険期間を決める(最長5年。契約期間と更新タイミングの考え方)
火災保険の契約期間は最長5年です。長期契約は割引が適用されやすい一方、契約期間中に保険料改定があった場合、その恩恵を受けにくい面もあります。更新タイミングの考え方については火災保険の見直しタイミングで詳しく解説しています。
⑤保険料を決める(構造・立地・築年数で相場が大きく変わる。安さだけで選ばない)
保険料は建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造)、立地(水災・地震のリスク地域かどうか)、築年数によって大きく変わります。特にサブリース契約を結んでいる物件や、自宅兼事務所の火災保険のような特殊な使用形態の場合は、通常のアパート物件とは異なる観点での検討が必要になることもあります。サブリース契約での火災保険の負担についても、契約形態によって保険料負担の考え方が変わる点にご注意ください。
5つの判断軸チェックリスト
- 補償対象は「建物のみ」か「家財・付帯設備込み」か整理した
- 補償範囲に必要な災害(風災・水災・盗難等)が含まれているか確認した
- 保険金額は再構築価額を基準に設定した
- 保険期間と更新タイミングを把握した
- 保険料だけでなく補償内容とのバランスで検討している
H2-3: 施設賠償責任特約・家賃収入特約・家主費用特約|3大特約の選び方
アパートオーナー向けの火災保険では、基本補償に加えて「施設賠償責任特約」「家賃収入特約」「家主費用特約」という3つの特約を組み合わせて検討するのが一般的です。この3大特約は、アパート経営特有の賠償リスク・収入減少リスク・運営費用リスクをカバーする、火災保険の選び方の中核といえる部分です。
施設(建物管理)賠償責任特約|入居者や第三者への賠償に対応
施設賠償責任特約は、建物の管理不備によって入居者や通行人にケガをさせてしまった場合や、共有部分(廊下・階段等)での転倒事故などに対応する特約です。借家人賠償責任補償・個人賠償責任補償とあわせて、施設賠償責任補償の3種類で構成されるのが一般的な組み立てです。
家賃収入特約|火災で建物焼失中の家賃減収をカバー
家賃収入特約は、火災や自然災害で建物が使用できなくなった場合の家賃収入の減少を補償する特約です。例えば、火災の影響で半年ほど入居募集ができなくなった場合、その期間の家賃相当額を受け取れる商品もあります。空室が多い物件では特約の必要性の考え方が変わってくるため、空室時の家賃収入特約もあわせてご確認ください。
家主費用特約|入居者退去時の原状回復費・訴訟費等の運営費をカバー
家主費用特約は、入居者の死亡や退去にともなう原状回復費用、訴訟対応費用など、アパート運営上発生しうる諸費用をカバーする特約です。近年は入居者の高齢化にともなう費用リスクへの関心も高まっており、家主費用特約の一種として、こうした運営費用をカバーする商品も選択肢に含まれるようになっています。
特約の付帯状況は保険会社やプランによって異なります。「基本補償に含まれている」と思っていた特約が実は別途付帯が必要だった、というケースも見られるため、契約内容を一度整理してみることをおすすめします。
H2-4: アパート火災保険の相場はいくら?|構造・立地・築年数での変動要因
アパートオーナー向け火災保険の保険料は、建物の構造・立地・築年数によって大きく変動するため、「相場はいくら」と一律に示すことが難しいという性質があります。ご自身の物件の条件を踏まえたうえで、複数社から見積もりを取って比較することが、実質的な相場感をつかむ近道になります。
保険料を決める要因(構造・立地・築年数・災害多発地の保険料加算)
保険料に影響する主な要因は、建物の構造(燃えにくさ)、立地(水災・地震等のハザードリスク)、築年数の3つです。近年は各社が参照する参考純率の改定も続いており、2024年10月には全国平均で約13.0%の引き上げが行われました。この改定幅は過去最大規模とされています(損害保険料率算出機構)。改定の背景や今後の見通しについては2026年の火災保険料改定で詳しく解説しています。
構造別の相場目安(木造vs鉄筋の保険料差)
一般的に、木造(H構造)は鉄骨造・鉄筋コンクリート造と比較して保険料が高くなる傾向にあります。近年の改定では、特に木造物件の値上げ幅が大きくなりやすいという指摘もあります。積雪地域の物件では雪害リスクも保険料に影響するため、雪害と火災保険の補償範囲もあわせてご確認いただくと、地域特有のリスクを把握しやすくなります。
保険料が値上がり傾向にある理由(自然災害増加・過去の保険金支払い増加・金利上昇)
保険料の値上がり傾向の背景には、台風・豪雨等の自然災害の激甚化にともなう保険金支払いの増加、建築費・人件費の高騰、建物の老朽化にともなう設備事故リスクの上昇などが挙げられます。詳しい背景と今後の見通しについては、次の見出しで解説する2026年の値上げ動向もあわせてご参照ください。
H2-5: 複数社比較・相見積もりの重要性|1社だけで決めない理由
同じ建物であっても、保険会社によって補償内容や保険料には違いがあります。1社だけの提案で決めるのではなく、複数社を比較したうえで検討することが、アパートオーナーの火災保険選びで後悔を防ぐ最も基本的な考え方です。
保険会社による補償内容・料金の差(「同じ特約でも会社が異なると内容が異なる」)
火災保険は保険会社によって商品内容が異なるため、同じ「施設賠償責任特約」という名称でも、補償の上限額や対象範囲に違いが見られることがあります。免責金額の設定についても会社ごとに幅があり、火災保険の免責金額の決め方で解説しているとおり、保険会社によって商品内容が異なるため、複数社を比較したうえで検討することをおすすめします。
相見積もりの取り方(3社以上が目安・一括見積もりサイトの活用)
相見積もりを取る際は、補償内容の水準をある程度揃えたうえで3社程度から見積もりを取得すると、保険料や補償内容の違いを比較しやすくなります。一括見積もりサービスを活用する方法もありますが、その後の営業対応が多くなる場合もあるため、対応方針を事前に決めておくと安心です。
見積もり比較時の注意点(保険料だけでなくサポート体制も確認)
比較の際は保険料の安さだけでなく、事故発生時のサポート体制(連絡窓口の対応時間、鑑定人の派遣体制等)や、担当者が継続してフォローしてくれるかどうかも確認しておきたいポイントです。
H2-6: 複数物件オーナー向け|火災保険を一括見直すメリット
複数の物件を所有するオーナー様にとって、「物件ごとに保険会社や担当者がバラバラで、更新月も管理しきれない」というお悩みは少なくありません。複数物件をお持ちのオーナー様にとって、契約を一度整理し、まとめて見直すことは、管理負担の軽減につながる選択肢のひとつです。
複数物件オーナーが直面する課題(保険会社・満期日・担当者がバラバラで管理困難)
物件を取得するタイミングごとに異なる保険会社・異なる担当者と契約を進めてきた結果、気づけば保険会社も更新月もバラバラという状態になっているケースは珍しくありません。特約の付帯状況が物件ごとに異なることこそ、複数物件オーナーが見落としやすいリスクといえます。
一括見直しのメリット(統一化による管理効率化・担当者の継続性・保険料の最適化)
契約をまとめて整理することで、更新手続きの一元化や、割引制度の活用漏れへの気づき、保険料の最適化につながる可能性があります。ただし、必ず保険料が安くなるとは断定できないため、あくまで「管理のしやすさ」と「補償内容の最適化」を主目的として検討することをおすすめします。詳しくは複数物件の火災保険を一括見直しするメリットで解説しています。地震保険についても、複数物件を横断して検討することでメリットが見えやすくなる場合があります。詳しくは賃貸経営における地震保険の必要性をご覧ください。
一括見直しの実施フロー(既存契約確認→見直し提案→乗り換え手続き)
一括見直しの進め方としては、①保険証券を集めて物件名・保険会社・保険料・更新日・特約を一覧化する、②更新月を可視化して着手の優先順位を決める、③複数社へまとめて見積もりを依頼する、④新旧契約の間に空白期間が生じないよう注意しながら乗り換え・統一を進める、という流れが一般的です。
H2-7: 2026年以降の火災保険値上げへの対策|見直しのベストタイミング
火災保険料は近年、値上げ傾向が続いています。2024年10月には参考純率が全国平均で約13.0%引き上げられ、2026年10月にはさらに10〜15%程度の改定が見込まれています(損害保険料率算出機構)。値上げ前のタイミングで契約内容を見直しておくことは、検討の選択肢のひとつになります。
2026年以降の値上げトレンド(背景:自然災害増加・保険金支払い増加)
値上げの背景には、台風・豪雨等の自然災害の激甚化にともなう保険金支払いの増加、建築費・人件費の高騰、マンション・アパートの老朽化にともなう水漏れ・給排水設備の事故リスクの上昇、ハザードマップと連動した水災リスクの地域細分化、といった要因が挙げられます(気象庁・国土交通省・損害保険料率算出機構等の公表情報にもとづく)。詳しい制度改定の経緯は2026年の火災保険料改定をご参照ください。
見直しのベストタイミング(「値上げ前」「満期が近づいたとき」の2つのポイント)
見直しを検討するタイミングとしては、満期日のおおよそ4ヶ月前を目安に代理店へ相談を始めるのがひとつの考え方です。相見積もりの取得には1〜2ヶ月程度かかることもあり、更新案内が届いてから動き始めると比較検討の時間が足りなくなる場合があります。火災保険の見直しタイミングでは、更新時期以外の見直しタイミングについても解説しています。
見直し時の注意点(現在の契約内容を整理→改善点を列挙→新プランで相見積もり)
見直しを進める際は、まず現在の契約内容(補償範囲・特約・保険金額)を整理し、過不足がないかを確認したうえで、複数社から新プランの見積もりを取るという順序で進めると検討しやすくなります。
H2-8: 火災保険で保険金を請求するときの流れ
万が一の際にスムーズに保険金を受け取るためには、請求の大まかな流れを事前に把握しておくことが役立ちます。
災害発生時の初期対応(保険会社への通知・現場写真の撮影)
被害が発生した場合は、まず契約している保険会社または代理店へ連絡し、被害状況をできるだけ詳しく報告します。あわせて、被害箇所の写真を複数の角度から撮影しておくと、その後の手続きがスムーズに進みやすくなります。
保険会社への請求手続き(見積書・修理報告書等の提出)
保険会社が指定する請求書類(事故状況の報告書、修理業者の見積書等)を準備し、提出します。必要に応じて、保険会社側の鑑定人による現地調査が行われることもあります。
保険金支払いまでのタイムライン
書類の提出から保険金の支払いまでにかかる期間は、被害の規模や調査の状況によって異なります。事前に必要書類を整理しておくことで、手続きをスムーズに進めやすくなります。弊社では保険金請求対応についてもサポートしており、請求方法の詳細については火災保険の見直しタイミングなどの関連記事もあわせてご参照ください。
H2-9: 地震保険もセットで検討|火災保険の補償範囲外リスク
火災保険は火災・風災・水災・落雷等を補償する一方で、地震・噴火・津波を原因とする損害は、火災保険単体では補償対象外となります。地震リスクへの備えを検討する場合は、地震保険をセットで検討する必要があります。
火災保険では補償されない災害(地震・津波による火災)
地震による延焼火災や、地震にともなう建物の倒壊・損壊は、火災保険の基本補償には含まれません。この点は多くのアパートオーナーが見落としやすいポイントです。
地震保険の役割(火災保険の30〜50%程度が上限。単独では高額補償できない)
地震保険の補償金額は、法律に基づき火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で設定する仕組みになっています。例えば、評価額5,000万円の物件で火災保険の保険金額を3,000万円に設定している場合、地震保険はその30〜50%にあたる900万円〜1,500万円の範囲で設定することになります。
地震保険の要否判断(立地・物件構造・事業継続性に応じた判断軸)
地震保険の要否は、①立地のリスク(想定される地震の震源域からの距離等)、②建物の耐震性(1981年以降の新耐震基準への適合状況。耐震等級によっては保険料の割引が適用される場合もあります)、③手元資金と負債の状況、という3つの軸で検討するのがひとつの考え方です。複数物件をお持ちのオーナー様の場合は、物件ごとに個別判断するだけでなく、ポートフォリオ全体で地震リスクへの備えを検討する視点も参考になります。詳しくは賃貸経営における地震保険の必要性をご覧ください。
よくある質問
まとめ
アパートオーナーの火災保険選びは、補償対象・補償範囲・保険金額・保険期間・保険料という5つの判断軸と、施設賠償責任特約・家賃収入特約・家主費用特約という3大特約の組み合わせで検討するのが基本の考え方です。そのうえで、1社だけの提案で決めるのではなく複数社を比較すること、そして地震保険とのセット検討も忘れないことが、後悔のない選択につながります。
複数物件をお持ちのオーナー様には、保険会社や満期日がバラバラになりやすいという共通のお悩みがあります。契約を一度整理し、まとめて見直すことで、管理の負担軽減や補償内容の最適化につながる可能性があります。詳しくは複数物件の火災保険を一括見直しするメリットをご覧ください。
火災保険の見直しやご相談をご希望の場合は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ご事情に応じて、複数社のプランを中立的にご案内いたします。

